内容説明
『キャプテン・フューチャー』や『スター・キング』でスペース・オペラの雄として知られるハミルトンは、奇想SF短編の名手でもある。カナダ奥地で発見されたゼリー状の奇妙な生物との遭遇を描く表題作、人里離れた山中に落下した多面体状の隕石に秘められた秘密「呪われた銀河」、『キャプテン・フューチャー』と同じ宇宙を舞台にした「失われた火星の秘宝」など傑作10編を精選。
著者等紹介
中村融[ナカムラトオル]
1960年生まれ。中央大学法学部卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
43
10篇。解説でぶっちゃけてるように科学論は誤りだったりする。というか物語にはほぼ小難しい理論は出てこない。無学な私が根拠のなさにツッコミ入れまくりたくなるほど単純明快に易しいのだが、そこがすごく魅力的。すっかり童心に還らされて楽しんだ。でも真面目に考えさせられるものも。「反対進化」超知能の異星人の驚きの退化。猫人間や犬人間が登場「審判の日」では人類の悪行が。「プロ」人気SF作家の息子が宇宙飛行士に。作家はいくら書いても本物の宇宙を体感することが出来ず息子に対して複雑に渦巻く胸中が自虐的で最高におもしろい。2022/07/26
亮人
29
科学的に古びているのは致し方ないがそこは見るべきところではなく、当時の最新科学トピックを取り入れた先見性と筆致にこもるパワーや寂寥感を味わうべき。地球人類の存在意義を揺るがすラストの「呪われた銀河」と表題作の二篇のアイデアが秀逸。勢いだけで最後まで読ませる「アンタレスの星のもとに」「ウリオスの復讐」も楽しい。そして一転してペーソスあふれる最後の二篇で締められているのもニクイ演出。個人的に白眉はその最後の二篇から「審判のあとで」の虚無感に。2014/10/04
フリスビー
22
★★★★☆1930~60年代にスペースオペラの名手として活躍したハミルトンの、奇想SF短編集。科学的考証を笑い飛ばすような、まさに途方もない奇想が炸裂します。人間の憎しみ・恨みをとことんまで突き詰めた「ウリオスの復讐」、読後の絶望感が半端じゃない「反対進化」、そしてやはり作者自身の心境をさらけ出した「プロ」には打ちのめされました。理論とか苦手な人でもSFの醍醐味を楽しめる、「人間」を描いた作品集ですね。2015/02/02
ニミッツクラス
16
05年の税抜920円の初版を読了。同年後発の「眠れる人の島」の姉妹刊。著者のSF分野の非常にバラエティに富んだ10編を収録で、中村氏による日本オリジナル選集となる。バロウズ・メリット風味、似非ハード、とんでも話、ディストピア、ディザスター、楽屋ネタ等々幻想や怪奇以外の著者の作風を存分に楽しめる。3編は先発82年の「星々の轟き」に収録済み。3編は本邦初訳で、「審判の日」(同掲の「審判のあとで」とは別物)は何かのアンソで読んだのだが結局不明。これは犬好きには目頭熱くなるポスト・ヒューマン物の秀作。★★★★☆☆2019/05/20
shamrock
15
書かれる時代によって、その時々の最新科学ネタを盛り込んでいて、科学の進化と一緒に歩んでいるような気がして楽しめました。「アンタレスの星のもとに」はご都合主義的に思えるが、しかし、陳腐化したヒロイックファンタジーへのカウンターだったのではないか。自分がある日突然英雄になってしまったら、人はどう考えるのか。そんなことを思った。SF作家と宇宙飛行士の息子の物語「プロ」からはハミルトンの心の叫びを聞いた気がした。別な時間軸への進入をする「異郷の大地」も良かった。なんとなくカーシュっぽい感じもしたよ。2014/08/24