内容説明
1835年9月、英国海軍船ビーグル号は本国への帰途ガラパゴス諸島に立ち寄った。真水の調達に向かう船と一時離れ、島に上陸したのは艦長を含む11名。翌日、宣教師の絞殺死体が発見された。犯人は捕鯨船の船長を惨殺し逃亡したスペイン人の銛打ちなのか?若き博物学者ダーウィンが混沌の中から掬い上げたのは、異様な動機と事件の驚くべき全体像だった!本格ミステリの白眉。
著者等紹介
柳広司[ヤナギコウジ]
1967年生まれ。2001年、長編『黄金の灰』を刊行しデビュー。同年、『贋作「坊ちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
120
キャラと謎解きを楽しめた一冊。柳さんのミステリって面白い。舞台は1835年のガラパゴス諸島。探偵役はあの有名な天才学者、ダーウィン。いわゆる孤島と化したガラパゴスで、奇怪な生物に紛れて発見されたのは白骨死体。次は絞殺体。果たして犯人は?島に潜む殺人鬼?こういう史実の時間に架空を交えた設定はワクワク感がたまらない。誰もが怪しさを増す環境の中、風変わりなキャラも相まって親しみやすい探偵役なダーウィンの姿はもちろん、真相にたどり着くまでの謎解きも複雑で楽しかった。ゾウガメが大航海時代の美味な食料だったとは初耳。2024/03/27
セウテス
88
「種の起源」で知られるダーウィンが、ビーグル号でガラパゴス諸島を訪ねた航海の中で、殺人事件に巻き込まれていたというミステリ。探偵役にダーウィンを置き、クローズドサークルの孤島を舞台に、動機やトリックなど意味を持たせた世界観は見事だ。歴史上の観点からも、本事件がダーウィンの「種の起源」に繋がる物語となっている事は、たいへん高いレベルでの考察の賜物だと驚かされる。しかし、こうした犯人が本作の動機を持つならば、今までに何の兆候も無しに仲間と過ごせるとは思えない。推理する上では、難しく納得も出来ない結末であった。2020/03/14
財布にジャック
71
柳さんがあの「種の起源」で有名なダーウィンを探偵にしちゃってミステリーなんて書いてたんですね。他にも実在した人物の登場もあり、舞台がガラパゴスで豪華すぎます。実は私は、孤島でクローズドサークル物には目が無いんです。自分の価値観を打ち砕かれる展開には、他のミステリーとは一線を画していて目からうろこでした。柳さんてやっぱり凄い作家さんです。2011/03/29
NAO
67
ビーグル号の乗員の中の数名が上陸したガラパゴス諸島の中の一つの島で、次々と起こった殺人事件。若き日のダーウィンが、その謎を解き明かしていく。嘘かまことかにわかには信じかねる不思議な世界。南海の離れ小島ではなんでもあり、という雰囲気が何とも面白い。また、殺人の動機が、ダーウィンの進化論ではないけれども、キリスト教の教義に大きな疑問を投げかけるものであったということも、この殺人事件の現場がガラパゴス諸島であったということに大きくつながっていて、場所設定の緻密さも感じられた。 2020/08/27
たか
53
初読作家さん。『種の起源』で知られるダーウィンが、ビーグル号でガラパゴス諸島を訪ねた航海の中で、殺人事件に巻き込まれる。探偵役にダーウィンを置き、クローズドサークルの孤島を舞台にしたトリックや動機に意味を持たせた世界観は面白い。歴史上の観点からも、この事件がダーウィンの『種の起源』に繋がる構成は実によくできている。ラストがやや冗長に感じるのが残念だけど、ガラパゴス諸島の雰囲気と探偵ダーウィンのユニークなキャラが楽しくて、本物のイグアナやゾウガメにも会いたくなった。Bー評価2024/03/02