内容説明
高崎市内の川土手で私立高校に通う女生徒の扼殺死体が発見される。その二日後、今度は同校の女性教師が謎めいた遺書を残して自殺する。そして行方不明だった野球部監督の毒殺死体が発見されるに及んで、俄然事件の背後に甲子園行を目指して熾烈な闘いをくり展げている学校同士の醜い争いが炙り出されてくる…。「模倣の殺意」「天啓の殺意」のトリック・メーカーが、密かな自信をもって読者に仕掛ける巧妙なワナ。改稿決定版。
著者等紹介
中町信[ナカマチシン]
1935年1月6日、群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら、67年から雑誌に作品を発表。第17回江戸川乱歩賞の最終候補に残ったのが、初長編の『模倣の殺意』である。以降、叙述トリックを得意とし現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
126
『高校野球殺人事件』からの改題や、中町作品の派手な仕掛けとはイメージ違い過ぎる静かな力作。甲子園出場を争う三つ巴野球部を巻き込んで起こる連続殺人。出場停止を恐れる背景が描かれるが、野球の要素はほとんど無い(笑)登場人物は決して多くないが、関係性の把握に少し苦しんだ…物語全般にバラまかれた意味深な伏線にワクワクできる。見つからない日記とそこから破り取られた遺書、赤い車、子猫のリーコなど怪し過ぎるけど結び付かない…真犯人は分かりやすいけど。低俗だったり執筆年故に感じる時代錯誤を差し引けば、丁寧さ楽しめるはず!2019/12/05
セウテス
57
〔再読〕「高校野球殺人事件」が新装され、タイトルが新しくなりました。当時は一年に一度出版の中町作品を、心待ちにしていた事が思い出されます。カー氏の「皇帝のかぎ煙草入れ」に、触発されて創られた作品と発表されています。内容ではなくプロットや坦々とした進行や、読み終えて再びプロローグに戻って声を上げてしまう、これぞカー作品を意識したと納得します。派手なイリュージョン・マジックも良いのですが、目の前で行われるカードマジックの様な、正に大人の作品だと思います。改めて新タイトルを見ると、思わずニヤリとしてしまいます。2015/04/20
geshi
33
高校野球を巡る欲望の話に焦点が当たってリアリティーラインを上げ、先を予想させない転がり続けるプロットを展開し、シンプルで小粒ならがも大胆なミスリーディングが活かされている。終わり近くまで2時間サスペンスのようだと思いながら読んでいたから、ラストで「そうきたか」という感じ。古さは否めないが心理的なトリックがちりばめられ、子猫の伏線もけっこう好み。ただし題名が他の作品とごっちゃになるし、『高校野球殺人事件』が時代に合わないのは分かるが、ピンと来ない。2017/12/01
かめりあうさぎ
31
殺意シリーズ第三弾。ある女性が自殺した。残された不可解な遺書、次々と分かる女性の秘密、悩み、そして人間関係。中盤過ぎあたりで犯人に目星がつきますが、最後のダメ押しからのエピローグ、からのプロローグを読み返したくなる感じが心地よく読了感が良かったです。派手なトリックはなく、人間模様もミスリードの仕方も妙に現実的で地味ではありますが、そういう側にありそうな感じが好きです。2020/11/10
佳乃
20
読んでいて推理物は嫌いじゃないよ、いや、好きな方だと思いますよ。ですが、時代が時代ものだからなのか・・・「~ですわ」の言葉遣いに背中ムズムズ。皆様そんなにお上品な言葉遣いの方たちばかりだったのかしら?『空白の殺意』でもいいけれど、当初の『高校野球殺人事件』でもよかったのではないかと思うが、なんか先が見えそうで手にはしてなかったかもしれない。なかなかに題を生み出すのも大変ですね。さ、続けて次も読もうかな。2019/04/11