出版社内容情報
舞台は太平洋を望む美しい海辺の町。足の不自由な小学生久美香と、親友の彩也子の友情を契機に、三人の女性たちによって車椅子の基金「クララの翼」が設立される。だが些細なことから連帯が軋みだす。傑作心理ミステリ!
内容説明
地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤により社宅住まいをしている妻・光稀。そして移住してきた陶芸家・すみれ。美しい海辺の町で、三人の女性が出会う。自分の居場所を求めて、それぞれの理想郷を探すが―。
著者等紹介
湊かなえ[ミナトカナエ]
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第二九回小説推理新人賞を受賞、受賞作を収録した『告白』(08年、双葉社刊)でデビュー。同作は09年、本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
741
湊かなえは新作をコンスタントに読んでいる作家です。本作は図書館の予約に少し出遅れて2ヶ月遅れで読みました。人間のいやらしさ、偽善、欺瞞を織り込んだ「ダークグレー湊かなえ」作品、一気読みしました。著者はユートピアなんて絶対ないと思っているのでしょうね。著者は本作をアルプスの少女ハイジ(正統)、家庭教師のトライ(パロディ)にインスパイアされて本作(イヤミス)を書いたのでしょうか?2016/02/06
ウッディ
606
お花畑と青い海を臨む岬のある地方の街、ここで生まれ育った菜々子、水産会社に勤める夫の転勤でここに来た光稀、芸術家として理想の地としてここを選んだすみれ。3人女性は、商店街の祭の実行委員として出逢い、「クララの翼」という車椅子を支援するボランティア活動を始める。幸せに暮らし、この地をユートピアにしたいだけなのに、嫉妬、やっかみそして見下しなど、嫌な感情に振り回され、幸せを見失ってゆく女たちを描いた物語でした。殺人事件は無くても良かったかも‥。とにかくよく燃える街だった事、子供のズルさが印象的でした。 2018/11/24
風眠
568
どんなに小さくても、子どもは物事の真実を分かっている。上手く言語化できないだけで、心で見抜いている。大人の優越も、欺瞞も、不満も、裏も表も、全部見抜いている。見抜いた上で大人が望む子どもを演じている。よくよく思い出せば、私もそうだった。いつからだろう、子どもだから分からないと思うようになったのは。太平洋を望む海辺の町、自然派志向の移住者、転勤者、元から住んでいる地元の人間。ほんの少しのずれ、息苦しさ。事故で歩けなくなった女の子と、社宅の女の子。ラストの種明かしはまるでミステリ版『ふたりのロッテ』のよう。2016/05/04
takaC
444
女はコワい。:-p2017/04/29
かなえ
404
男性の心を描くより、女性の心を描いた作品のほうが巧いですね。「リバース」を読んだ直後だから余計にそう思います。いろんなタイプの女性たちの表と裏の顔。嫉み、ひがみ、羨望。いろんな感情が小さな町に渦巻いていました。素直な子供たちだって、どんなことを考えているのか…。わかったもんじゃないですよね。2015/12/29