内容説明
地蔵坊先生お気に入りのカクテル『さすらい人の夢』の二杯目が空く頃、物語は始まる。土曜の定例会で山伏の先生が聞かせてくれる体験談ときたら、ローカル線の犯人消失、崖に住む新興宗教家の死、トリュフに端を発する真夏日の事件、雪と共に降って湧いた博士邸の怪など、揃いも揃って殺人譚。ことごとく真相を看破したという地蔵坊が、名探偵行脚さながらの見聞を語る七話を収録。
著者等紹介
有栖川有栖[アリスガワアリス]
1959年4月26日、大阪市生まれ。82年同志社大学法学部卒業。89年1月「月光ゲーム」でデビュー。本格ミステリ作家クラブ初代会長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
75
短編集。山伏の体験談か法螺をふいているのか?。雰囲気がゆるくてイイ感じ。2013/10/25
セウテス
73
貴女と夜と音楽と。酒を嗜む事を目的とした場所という物は、そのままミステリーが似合います。仲間と酒とミステリーと、そんな安楽椅子型の作品は、結構在る様で大好きです。本作は、基本的な傾向は古典からの形を引き継ぎながらも、山伏が名探偵という驚きの作品です。実は私ミステリーの中では、このタイプの作品を読む時は、雰囲気を楽しんで推理はあまりしないのです。一緒に酒を飲んで話を聴いている、その状態に浸っています。思わず有栖川氏の作品だという事を、忘れてしまう流れを味わって下さい。解説の安楽椅子探偵概念も、一読ものです。2016/02/20
涼
66
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2023/01/post-129ef7.html 「えいぷりる」に集まる常連が、必ずしも地蔵坊の話を信じているわけではなく、しかし酒の肴としてその日の飲み代を持つという設定はどうかなぁという気もします。2023/02/02
HANA
63
毎週土曜日、夜のバー。いつもの常連が耳を傾ける中、山伏の話が始まる。探偵役が一方的に語り聞き手がその真偽を判断する手段が無いって状態は解説で書かれているように隅の老人を思い出させるが、著者の筆遣いからかどちらかというと親戚の叔父さんの法螺話を聞いている気分にさせられる。特に面白く感じたのは論理だけで不可能犯罪が暴かれる「毒の晩餐会」。トリックも多いがちょっと小粒なイメージ。「天馬博士の昇天」はちょっとアンフェアじゃないかな。あと地蔵坊の最後の台詞から、あのシリーズ関係者の後の姿だと予想するのも楽しいかな。2020/01/14
yukaring
59
修行で全国を放浪する山伏・地蔵坊先生が各地で出会った事件は揃いも揃って殺人譚。類いまれな推理力で全ての真相を看破した、という地蔵坊の体験談を楽しみに土曜日の夜にバー『えいぷりる』に集う青野と4人の仲間たち。地蔵坊のお気に入りのカクテルの2杯目が空く頃にはじまる"お話"を楽しみに、それぞれの推理を披露するがなかなか正解には辿り着けない。しかも事件はローカル線の人間消失や仮装パーティーで起こる事件など興味深いものばかり。5人の掛け合いと地蔵坊が語る真相がとても楽しい「黒後家蜘蛛の会」を思い出させる短編集。2022/11/06