内容説明
中国の僧坊で伏虎拳の修得に余念がなかったニールに、父親にさらわれた二歳の赤ん坊を無事連れ帰れ、という指令がくだった。捜索の道のりは、ニールを開拓者精神の気風をとどめるネヴァダの片隅へと連れ出す。不穏なカルト教団の影が見え隠れするなか、決死の潜入工作は成功するのか?悲嘆に暮れる母親の姿を心に刻んで、探偵ニール、みたびの奮闘の幕が上がる。好評第三弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ずっきん
81
【ドン・ウィンズロウ再読祭り開催中】仏陀と金玉を飛ばしたのは、カレンにちょこっと会いたくてこっちを開いちゃったから。そしたらもう止まらなかったから。というわけで【ニール・ケアリー】シリーズ3である。父親に拐われた子供を連れ帰るため、舞台は荒くれカウボーイひしめく中西部ど真ん中へ。とはいえ、そこは単純にイーハー!とはならないわれらがニール。ナイーブさとへらず口は健在である。潜入捜査につきものの胃と心臓を絞られるような描写と、ド派手なドンパチ。後の作品にみられる容赦の無さももうこの作品で芽吹いていたんだなあ。2020/05/12
ずっきん
74
『仏陀』読んだら止まらないよなあ。中国にグレアムが迎えに行くシーンってどうだったっけ?って開いたら、全部読んじゃった。カレンにも出逢うし、ニール大人になるの巻である。シリーズのこの後はアレだし、ニールに会いに『壊れた世界の者たちよ』いっちゃうなこりゃ。ところで読めば読むほど長浦京氏の『アンリアル』がこのニールケアリーシリーズに被るなー。期待♪2023/08/28
ナミのママ
58
シリーズ3作目。前作の終わりから3年、中国でひっそりと暮らしていたニールに指令がくだる。中国からアメリカへ。簡単な仕事のはずだった…というのは毎度のパターン。2歳児を連れ戻す仕事はこじれにこじれ、カルト教団まで現れる。1993年に本国で発売になった作品だが古臭さはまったく感じない。恒例になったメンバーのキャラクターも変わりなく楽しい。2021/11/24
GaGa
52
シリーズ三作目。アメコミ的な内容、展開ながらも、シリーズで一番面白かった。やはり私はニールよりもグレアム、レヴァインなどのシブいおっさんが好み。そこにスティーブ・ミルズなんてキャラクターが追加されたのだから、もう大満足。途中でかなりご都合的な展開があるも、それはシリーズすべてにいえることでご愛嬌。なんとなく、この作品が名作「犬の力」のベースとなった気さえしてきてしまった。2012/05/10
Tetchy
46
今回の展開は痛い。実に心が痛む物語だ。毎度毎度の潜入捜査ながら、マンネリに陥らず、物語に深みが増している。1作目に「潜入捜査の終わりは裏切りだと常に決まっている」と書かれていたが、今回はまさにそう。自分の主義・真意を偽り、任務を全うしようとするニールの心引き裂かれんばかりの葛藤。いやあ、3作目にしてこの濃密さ。ウィンズロウ、実に巧い!思わず目蓋に熱を感じてしまった。そしてレヴァインの堂々たる活躍ぶり!また“孤独の高み”を乗り越えたニールはもはや孤独ではない。残り2作のニールのその後が実に愉しみだ。2010/06/28