内容説明
英国ミステリ史上、ひときわ異彩を放つ重鎮ブランド。本書には、その独特の調理法にもとづく16の逸品を収めた。コックリル警部登場の重厚な本格物「婚姻飛翔」、スリルな満ちた謎解きゲームの顛末を描く名作「ジェミニー・クリケット事件」、あまりにもブラックなクリスマス・ストーリー「この家に祝福あれ」など、ミステリの真髄を伝える傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
306
評判が良いので期待して読んだのだがイマイチ。というのも、文章がとにかく読みづらい。「構成が複雑」「翻訳が直截すぎ」「地の分に第三者の感嘆符がけっこう入る」「主体の呼び名がコロコロ変わる」あたりが原因か。肝心のトリックも膝を打つほどのものではなく、後半に至ってはミステリーというより単なるサスペンス。原文で読めば文章の巧みさに引き込まれるのかもしれないが、あまり翻訳には向いていない作品のように思えた。もしくは、もっと思い切って意訳するくらいの工夫が必要か。雰囲気はいいのだけどね。2016/03/05
Kircheis
123
★★★★★ いくつかの話を、それぞれコース料理の一品に例えた短編集。 自分には読書の醍醐味は長編にこそあり、短編集は通勤時間や待ち合わせの隙間時間を潰すためのものという固定観念があったのだが、この作品で完全に覆された。 ほぼ全ての話が超おもしろく、グイグイと引き込まれてしまう。ベストを挙げるのは難しいが、『婚姻飛翔』と『スケープゴート』が双璧。ラスト付近はやや停滞するものの、最高に幸せな読書タイムを過ごせた。 なお、後味の悪さで『もう山査子摘みもおしまい』も心に刻まれている。2019/07/02
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
66
ボリューム満点、良い意味でお腹がいっぱいです。一品一品がクセが強く、それぞれの「味」を楽しませます。毒などは入っておりませんとありますが、さてさて(笑)収録されている数が多いので一々感想は書けませんが、全体として皮肉り方が凄いです。初め四つ以外後味がなかなかに悪いのですが、その毒気が物凄い方にかえって惹かれてしまったり。ベストを選べと言われると辛いけれども強いて言うならジェミニー・クリケット、カップの中の毒を。おいしいビュッフェだったのは確かですが、中に入っていたかもしれないと毒がじわじわと来そう。2015/10/27
Panzer Leader
61
最初の4扁はまあまあかな、でも展開が読めるよねえと思っていたら、「ジェミニー・クリケット事件」で全く先行きが読めず、ラストはハンマーで頭を殴られたようなショック。そして最後まで作者の変幻自在なストーリーに愚弄されました。参りました、ブラントさん、あなたの料理を堪能しました、お腹一杯です。2017/08/25
紅はこべ
60
「バルコニーからの眺め」はサキの短編とオチが同じ。勿論過程は違うが。「ジェミニー・クリケット事件」は、北村薫氏推奨の米国版より、本書の英国版の方が好き。この茫漠とした終わり方が良い。事件の第三者が真相を語る体の米国版はわかりやすすぎる。ブランドはアメリカ人には丁寧に解説しないとわかってもらえないと思ったのかな。2009/09/01