内容説明
シーモア・メリマンは商用の途次に立ち寄ったフランスの製材所でふと不審を覚え、帰国後クラブの喫煙室で披露に及んだ。聴き手の一人ヒラードが非常な興味を示し、密輸ではないか、調べようと提案、二人は休暇を利用して危険に満ちた探索に乗り出した。疑惑は深まるものの決定打を欠く膠着状況が意外な形で打ち破られるに至って、遂にメリマンは警視庁を訪れ経緯を明かすが…。
著者等紹介
吉野美恵子[ヨシノミエコ]
1944年生まれ。1967年日本女子大学英文科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
26
第一部「アマチュア」はメリマンの強い個人的動機によって行われる捜査。第二部「プロフェッショナル」は取り返しのつかない事件が起きてやっと警察により捜査が行われる過程を描く。個人的動機は極めてシンプルだ。メリマンは製材所の主任の娘マデリーンに一目ぼれしたのだ。理由はどうやら彼女が茶色づくめであったことらしい。頭にかぶった茶色い頭巾形の帽子、茶色の上着に茶色のスカート、茶色の靴下と小さい茶色の編上げ靴、加えて茶色の髪ときたもんだ。第二部「プロフェッショナル」篇でウィリス警部が事件に拘るのは、ずばり昇進目的だ。2020/09/05
はと
16
商用でフランスに赴いた普通の青年が、道で見た時と製材所で見た時ではナンバープレートが違っていたという奇妙なトラックに遭遇する。前半素人たちによって、後半は刑事によって、調査が進められ、やがて巧妙な企てが明らかにされていく。刑事は警察官というよりも探偵に近い感じで、警察官とは思えない様々な技を披露して捜査を進めるが、最後まで一筋縄ではいかない展開!訳者あとがきに、「クロフツの作品にあっては天才は探偵ではなく、常に犯人の側なのである。」と書いてあったけれど、まさに!という感じ。2014/08/31
bapaksejahtera
12
古典的な作家の百年前の作品。但しPラヴゼイの一連の復古作品にあるような馬車タクシーの時代とは異なり、電信電話網が張り巡らされている。但し古い時代同様階級制度は明確だし、警察の操作手法も上記クリッブ巡査部長同様に組織的ではないところが面白い。英国紳士階級の若い二人がフランスで英国人が経営する製材所の動きに不審を感じて私的な捜査を行うが、そのうちに殺人が出来。事件は警察の手に渡り、密輸事件が暴かれるという筋。やや諄い記述が多く、現実離れの行為(樽の中での長時間監視)もあったが古典推理小説をなるほどと楽しんだ。2021/09/28
ホームズ
9
2部構成にする必要がちょっと微妙でしたね。1部はスリルがある感じで良かったですが2部で少し失速してしまったような。ウィリス警部はフレンチのプロトタイプのプロトタイプって感じでまだキャラクターが薄いですね。同じ2部構成だった『フローテ公園の殺人』程のインパクトはなかったですね。面白かったとは思います(笑)2009/04/29
elf51@禅-NEKOMETAL
6
クロフツの3作目。ガソリンがなくなり,バイクで立ち寄った先に美女が。立ち寄り先の製材所のトラックNoが行き帰りで変えられていた。前半は友人と共に素人探偵が製材所の謎を探る。あっさり女性に惚れてしまうのはなんともだが,こういう始まりは最近の軽いミステリーにありがちだ。後半は警部が自ら調査に出る。簡単に開く鍵,盗聴と都合よく行き過ぎだが,これまた最近見られたりして,当時の流行小説も同じだったのかなと。3作目で未だこなれていない感じはする。ただ,鉄道技術者の知識は所々に入っており,ここはさすがクロフツだ。2021/03/06
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