出版社内容情報
『52ヘルツのクジラたち』本屋大賞受賞作家、町田そのこ最新作!
蛍が舞う夜――山間にある小さな町に暮らす中学生の坂邑幸恵と桐生隆之は、どうしようもない状況に追い込まれ、互いの罪を隠し合う“共犯者”となった。それから十五年後、大人になった二人が再会したことをきっかけに、二人とその周囲の人生が大きく動き出す。同僚として、友人として、家族として……ぬぐい切れぬ「罪」の記憶に翻弄されながらも、真摯に生きた人々にあたたかなまなざしを注ぐ感動の傑作長編。
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- 評価
乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
70
「逃亡の夜」「少年の目」「神様にお願い」「しあわせのかたち」「蛍が舞うころに、また」5話連作短編集。人の噂があっというまに広がる人口の少ない田舎町で、中学生の幸恵と隆之は祭りの日に秘密を共有する。それから15年。再開した2人の周囲を描いたストーリー。これでもかと不幸を重ねた登場人物にうんざりしつつ読み進めた。そこから最後に繋げていけば確かに人のあたたかみは感じる。作者らしい作品といえばいいのかな。(いただいた本)(サイン本)2025/07/22
さぜん
34
山間の蛍が舞う夜、妊娠中の幸恵は暴力を振るう相手を殺し人生を終わらせようとしていた。中学時代、同じ場所で出逢い、秘密を共有し合った隆之と再会し、幸恵の子、正道は救われる。虐待や貧困といった過酷な境遇の中で生きていかねばならない子供達。絶望に中に微かに見える希望を町田さんは描く。それが読む側に様々な気付きを与えてくれる。「52ヘルツ」を読んだ時に感じた読後感。2025/07/15
akiᵕ̈
29
これぞ読みたかった、わたしが好きな著者らしいと思える作品。恵まれない家庭環境の元で暮らす幸恵と隆之が蛍が見れる山で偶然出会し、互いの秘密を抱えながら、自分の居場所と家族を守るため深い絆で結ばれた親子と、そして家族の物語。親に恵まれないという境遇がどれだけその子どもに絶望を与え生き辛くしていくのか。それでも子は親を求める。親の愛が確かにあったと。隆之の生きてきた道は、壊したもの、失くしたもの、欲しかったものを正道を通して償い、補い、懸命に生きてきたと思う。正道にも遠回りして辿り着いた愛と希望の光が差す。2025/07/22
ユウハル
8
自分の行いではないところで自分を評価されてしまう色々な悲しみと辛さが溢れているんだけど、最後には一筋の光のような手が差し伸べられている感じがしてとても気持ちが良かった。読んでいて文章が感情が自分の体に沁みてくるのがわかる。途中で何度も自然と涙が出た。2025/07/24
ゆり
8
町田先生の集大成というような一冊。いままでの毒親が全員出てきたのかなと思うほど、子供をどうして産んだんだろうという親ばかりが出てくる。男もほぼ全員クズで、女性は恋愛依存症気味。子供側の救いという視点で見ると、「52ヘルツのくじらたち」のほうが親子の関係性について考えさせられた気がします。今作は現実離れすぎるほどの毒親が出てくるので、もう少し的を絞ってほしかったなと思いました。登場人物の心情の描き方が町田先生の他作品に比べるとあっさりめかなと思いました。2025/07/21