出版社内容情報
『52ヘルツのクジラたち』本屋大賞受賞作家、町田そのこ最新作!
蛍が舞う夜――山間にある小さな町に暮らす中学生の坂邑幸恵と桐生隆之は、どうしようもない状況に追い込まれ、互いの罪を隠し合う“共犯者”となった。それから十五年後、大人になった二人が再会したことをきっかけに、二人とその周囲の人生が大きく動き出す。同僚として、友人として、家族として……ぬぐい切れぬ「罪」の記憶に翻弄されながらも、真摯に生きた人々にあたたかなまなざしを注ぐ感動の傑作長編。
内容説明
ずっと夜のままかもしれない。そう思ったあの日、あなたがわたしの光になった。自分の居場所を探し続ける人々をあたたかく照らす、本屋大賞受賞作家による、心ふるえる傑作小説。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
375
親ガチャという言葉は使いたくないが、毒親や機能不全家族の子が救われない境遇なのも事実だ。そんな家庭の子は否応なく他者の心を読むのに長け、必死に生きようとする。親に恵まれない遺伝に呪われたような連鎖のただ中にある子が、身勝手で情けない大人たちから逃れようと苦闘する姿を描く連作短編集は、思い切り苦味の強い酒を5杯続けて飲まされた気分になる。かろうじて救いの予感を残すためどん底には落ちていないが、人の弱さ愚かさを容赦なく抉る物語は読むのが辛い。それでも連鎖を断ち切って自立する少年に、人として希望を託したくなる。2025/08/14
starbro
338
町田 そのこは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、不幸の連鎖、壮絶人生の連作短編集でした。蛍が舞う夏祭りの夜の祈りは、中々、叶いません。https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/97844880292962025/11/23
さてさて
329
『生活が便利になるにつれて、蛍も減ったのよ。何かを手に入れたら何かがいなくなる』。『蛍』という存在を主人公たちの人生の中に象徴的に描いていくこの作品。そこには、『蛍』の光を象徴的に見せていく五つの物語が描かれていました。五つの短編が強固に結びつくこの作品。まさかの人物が物語を繋いでいくこの作品。五つの短編が強固に結びつき、一つの世界を作り上げていくこの作品には、『親』と『子』の関係性を改めて思う中に、それぞれの『居場所』を探し続ける人たちを『蛍』の光が象徴的に照らし続ける素晴らしい物語が描かれていました。2025/12/14
bunmei
268
心痛めた人々の心に寄り添いながら、そんな人生にも一筋の光が差し込ませる町田作品。本作もそうした町田作品らしさで結末を迎えたが、そこに行き着くまでに綴られた、5編の人々の人生は、幼少期からのあまりにも過酷で悲惨な運命と境遇に、心抉られる。衣食住がままならず、親に愛される事も叶わなかった人々。そんな状況から抜け出そうと、必死に足掻いた末に背負った『罪』の重さ。ただ当たり前の幸せを望んだだけなのに、それさえ叶わない世界観に、息苦しくなる。それは、夏の夜に光を放って消えゆく、蛍たちの儚い祈りなのかもしれない。2025/08/31
うっちー
264
正道の生きざまが何よりの救いでした2025/08/05




