出版社内容情報
『52ヘルツのクジラたち』本屋大賞受賞作家、町田そのこ最新作!
蛍が舞う夜――山間にある小さな町に暮らす中学生の坂邑幸恵と桐生隆之は、どうしようもない状況に追い込まれ、互いの罪を隠し合う“共犯者”となった。それから十五年後、大人になった二人が再会したことをきっかけに、二人とその周囲の人生が大きく動き出す。同僚として、友人として、家族として……ぬぐい切れぬ「罪」の記憶に翻弄されながらも、真摯に生きた人々にあたたかなまなざしを注ぐ感動の傑作長編。
内容説明
ずっと夜のままかもしれない。そう思ったあの日、あなたがわたしの光になった。自分の居場所を探し続ける人々をあたたかく照らす、本屋大賞受賞作家による、心ふるえる傑作小説。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
289
親ガチャという言葉は使いたくないが、毒親や機能不全家族の子が救われない境遇なのも事実だ。そんな家庭の子は否応なく他者の心を読むのに長け、必死に生きようとする。親に恵まれない遺伝に呪われたような連鎖のただ中にある子が、身勝手で情けない大人たちから逃れようと苦闘する姿を描く連作短編集は、思い切り苦味の強い酒を5杯続けて飲まされた気分になる。かろうじて救いの予感を残すためどん底には落ちていないが、人の弱さ愚かさを容赦なく抉る物語は読むのが辛い。それでも連鎖を断ち切って自立する少年に、人として希望を託したくなる。2025/08/14
bunmei
205
心痛めた人々の心に寄り添いながら、そんな人生にも一筋の光が差し込ませる町田作品。本作もそうした町田作品らしさで結末を迎えたが、そこに行き着くまでに綴られた、5編の人々の人生は、幼少期からのあまりにも過酷で悲惨な運命と境遇に、心抉られる。衣食住がままならず、親に愛される事も叶わなかった人々。そんな状況から抜け出そうと、必死に足掻いた末に背負った『罪』の重さ。ただ当たり前の幸せを望んだだけなのに、それさえ叶わない世界観に、息苦しくなる。それは、夏の夜に光を放って消えゆく、蛍たちの儚い祈りなのかもしれない。2025/08/31
hirokun
182
★4 町田そのこさんの連作短編集。ダメ親の影響を受けながら生きていく子供たちが、何かしらの縁でつながっていく物語。非常に悲惨な環境下で育った子供に涙すると同時に、傲慢な姿勢で自分自身の恵まれた環境を当然の事の様に受け入れてきた自分が恥ずかしくなる。親ガチャでその後の人生が決まってしまう様な社会は、共助・公助が関わることにより変えていかなければならない。2025/08/12
うっちー
182
正道の生きざまが何よりの救いでした2025/08/05
いつでも母さん
175
拝啓、町田さま。これでもかと重苦しい人間ドラマを紡いで心身ともにすり減ってはいないでしょうか。連作5話、それぞれのラストにほのかな願いを勝手に刷り込んでしまう私をお許しください。蛍の光でも、明け方の星でもいい、心は正道の傍でこれからの日々を穏やかに見守る所存です。親として、人として私自身に出来ることは・・多くの正道が真っ直ぐ逞しく生きて行けますようにと願うばかりです。私もどこかで「ズルい親」の一人だったかもしれません。沢山の苦しみと共に本作を拝読いたしました。これからもずっと追いかけさせていただきますね。2025/08/04