出版社内容情報
「とらすの会」にはマレ様と呼ばれる世にも美しいひとがいて、悩みや不満を話すと、その原因となる人物は無惨な殺され方をするのだ――。多発する惨殺死体について調査をするライターの美羽は、取材相手からそのような話を聞き出す。よくある妄想だと話を切り上げようとすると、取材相手が破裂するようにして死んでしまう。異様な出来事にショックを受けながらも「とらすの会」に潜入する美羽だったが……。『ほねがらみ』『異端の祝祭』で話題の著者が贈る、新世代のカルトホラー!
内容説明
安息を求める人々が集う「とらすの会」。皆の輪の中心で微笑む美しい「マレ様」に殺したい人間の名を告げると、必ず凄惨な死を遂げる。錯乱状態に陥った少女は、オカルト雑誌のライター・美羽の眼前で突然、爆発するように血肉を散らして死んだ。スクープを狙った美羽は「とらすの会」を訪ねるが、マレ様に出会ったことで、想像を絶する奈落へと突き落とされる―ホラー界の新星が描く、美しい異常。
著者等紹介
芦花公園[ロカコウエン]
東京都生まれ。Web小説サイト「カクヨム」で公開していた「ほねがらみ―某所怪談レポート」が注目を集める。同作が編集者の目に留まり、2021年4月に幻冬舎から刊行された『ほねがらみ』で書籍デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiace9000
111
耽美的ホラーのエグ味とイヤ味を存分に堪能です。気づくと完全に引き込まれるストーリー展開はもうお見事。悪魔崇拝をベースにすると、どうしても洋物感が強くなり、作品との物理的距離感を感じるものですが、今作にそれを感じないのは卑近なジャパニーズ・スクールカーストやいじめ問題が描かれているせいか?とも。グロ系苦手なはずなのに、希彦の美しさが不思議と中和剤となり、あらゆるものを巻き込み、逃れられない不条理と理不尽や悪によって悪を制する歪んだカタルシスに「耽」してしまう時点で、人間のなかの「とらす」発動なのであります。2024/07/06
そら
87
猟奇的で人間の仕業とは思えない連続殺人事件を追う女性ライター、友人がいじめに巻き込まれていく男子中学生、女性ライターを追う女性警察官。全く別の話が交互に展開していく。マレ様と呼ばれる美しい女性教祖の元へ、恨みを抱えて生きる人々が集まり願えば相手を殺してもらえる。オカルトチックなストーリーが男子中学生"まれひこ"とどう繋がっていくのか?予備知識なしで一気に読んで欲しい。ラスト1頁、この結末は後を引く。文句無しに面白かった!2022/10/19
ゆのん
80
無差別連続殺人事件。被害者の人数も、遺体の状態も猟奇的で読み出しから不穏な空気を感じる。数ページ読んだだけでも人間ではない何かの関与を確信。人生を諦め切っているライター、美し過ぎる少年、刑事の3つのパートから徐々に真相が明らかになってくる。日常生活の中で人間関係程厄介で面倒なものは無いと思う。人間嫌いで1人の時間を愛する私であっても誰とも関わらずに生きていく事は出来ないわけで。思わぬ所で他人から悪意を向けられる事は誰しもあるだろうが『トラスの会』が実際にあったらと思うと怖い。2022/08/26
さっちゃん
61
「とらすの会」で許せない奴の名前を告げるとマレ様が殺してくれる。それもとても人間の仕業とは思えないような残虐でおぞましい方法で。マレ様とは一体⋯。/物語は坂本美羽、川島希彦、白石瞳の三人の視点から語られるため飽きることなく一気に読まされる。佐々木事務所シリーズではないけれど、ポーリク青葉教会と思われる記載や物部一族の名が出てくる(あちら未読でも問題ナシ)。面白かったけれど佐々木事務所シリーズと似たパターンで差異があまり感じられないのがちょっと残念かな。でも今回も不気味で怖くて好き。2022/08/29
Ayako
53
初読みの作家さん。SNSで話題になっていたので読んでみた。「とらすの会」は、虐げられた人々が集う場所だ。会合で許せない人物の名をマレ様に告げると、翌日その人物が凄惨な死を遂げるという。各章ごとに視点が変わり、スピード感のある展開で引き込まれた。よく本当に恐ろしいものは、人間だと言われる。確かにそれは真実だと思うが、もしも人間の行動や想像力をも凌駕した「究極の恐怖」というものがあったならば、それはどのようなものなのだろうかと考えた。2022/11/27