出版社内容情報
ホームズは間違っている。「バスカヴィル家の犬」の謎を解くのはバイヤールだ。フランス論壇の雄バイヤールが解くホームズの推理の誤謬。知的スリルに満ちた探偵批評。
内容説明
『アクロイドを殺したのはだれか』で、エルキュール・ポワロの推理に異を唱え、アガサ・クリスティ『アクロイド殺害事件』の真犯人を暴き出した“推理批評”家バイヤールが、今回はシャーロック・ホームズに挑戦する。シリーズ中の代表的長編『バスカヴィル家の犬』を俎上に、ホームズの推理の疑問点、矛盾点を指摘し、事件の真相に迫るのみならず、ホームズとドイルの関係をも分析するという知的スリルに満ちた現代文学批評の傑作。
目次
ダートムアの荒地
捜査
再捜査
幻想性
現実
バスカヴィル家の犬
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゃれら
19
深町訳バスカヴィル(以下「正典」)の解説で紹介されているからかなり以前から知っていた本だが最近まで気に留めていなかった。先月書店で平積みになっていたのを見て猛烈に気になり、作者の代表作「読んでいない本」を読み、正典を読んで挑んだら期待を上回る面白さだった。本書の存在を意識しただけで正典の推理は突っ込みどころだらけと気づいてしまい、本書では著者の指摘にいちいち頷かざるを得ず、真犯人指名に納得してしまった。ドイルさん自身の仕掛け……、ってことはないだろうが、それくらい説得力がある。正典ファンは楽しめます。2024/11/27
Alm1111
11
中盤で中だるみはしたが、事件を一つ一つ丁寧に洗い直し、かつ書いた当時のドイルの心情、読者の気持ちまで汲み取り推理し直した一冊だ。犯人を捜す上で最も大切なキーワード「誰が何によって得をするか」これを当てはめれば自ずと真犯人は絞られてくる...のかもしれない。バイヤールの新たな推理も腑に落ちる。この発想は面白く、アクロイド殺しの「真犯人」説も読みたくなった。ただ中盤の読者心理論みたいなのが、翻訳もまどろっこしいし、何が言いたいのか見失いがちで何度も眠りこけた。これはファンブック的な学術書なのかもしれない。2024/12/09
蛸
9
『バスカヴィル家の犬』を読んだときに自分が感じた「本当にこのホームズの推理は当たっているか」という疑問がこの本ではじっくりと検討されている。さらに著者が『読んでいない本について堂々と語る方法』のバイヤールとなれば読むしかないだろう。著者は作品を開かれたものとして扱い、テキストは読者の中で初めて意味を結ぶという批評スタンスを示している。だからこそホームズの誤りを指摘しワトソンを「信頼できない語り手」として見る「読み」が可能になるのだ。犯人探しだけでなく推理批評の方法論を述べた件も非常に面白い。復刊希望。2017/05/16
tieckP(ティークP)
9
フランスの批評家による「推理批評」実践の本。テクスト分析の愛好家と、「犯人は違ったのだ!」が読みたい人との間をうまく取り持った本。実を言うと、すでに評価の定まった小説に対する新たな批評はおしなべて推理批評に近くて、それはいままで関心を持たれていなかった文章に着目したり、既存の読者の固定観念から一度逃れたりすることで、本の別の読みを提示する試みである。なお、ドイルがホームズを疎ましく思って登場頻度を減らしたのは有り得ると思うけど、無意識のうちにわざと推理ミスさせたとは深読みしすぎだと思う。2013/06/28
鐵太郎
7
なるほど、こんな考え方もありか。みごとなまでの逆転の発想。そして最後の結論として、かつてヒューゴー・バスカヴィルによって死に追いやられた名もない娘が、コナン・ドイルに憑依して、二世紀後に復讐を果たしたのかも知れない、と。もって瞑すべし、と言うべきか。フム。2012/09/02
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