内容説明
20世紀最高の文学『失われた時を求めて』の作家の生涯と作品の形成過程を、プルースト研究の第一人者が、同時代の文化的、社会的背景を踏まえて、多角的かつ鮮やかに描く。肖像口絵図版多数、地図、詳細索引。
目次
『アミアンの聖書』
『胡麻と百合』
文学の再生
『サント=ブーヴに反論する』
『失われた時』(1912‐1914年)
1914年の小説
1918年の小説
生と死のはざま
著者等紹介
タディエ,ジャン=イヴ[タディエ,ジャンイヴ][Tadi´e,Jean‐Yves]
1936年生まれ。高等師範学校卒。文学博士。パリ=ソルボンヌ大学教授
吉川一義[ヨシカワカズヨシ]
1948年生まれ。東京大学仏文科卒。パリ=ソルボンヌ大学文学博士。都立大学教授
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感想・レビュー
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夜間飛行
53
『失われた時を求めて』の中で淫奔な小間使いの影を追っていくヴェネツィア旅行は、作中でも殊に深い陰翳を見せる章だが、本書を読むと、実際はプルーストが尊敬したラスキンの着想を確かめにいく旅だったらしい。その着想とは、宗教建築と世俗が固く結びついているというものだった。コンブレーの教会にある農民風の聖女像の面影がゲルマント夫人やアルベルチーヌの容貌に写し取られる…その根源はラスキンにあったようなのだ。後にプルーストは、海辺のカブール周辺で見た沢山の建築の印象を作品に書き込むが、そこにも聖俗一体の夢が感じ取れる。2016/03/13
NAO
22
『失われた時を求めて』。美しいが冗長な文章を延々と読み続けていくのは結構つらい。でもそれは、作者が何の意図をもってこの作品を書いたのかが分かりづらいことにも原因があると思う。『ゲルマントの方』は、ただ社交生活を描いた風俗小説でしかないのか。『ソドムとゴモラ』や『囚われの女』は? 本書に記されたプルーストが作品の中に散りばめた芸術論や推敲の経緯は、長大な作品を読み解く鍵になる。長くて難しい話だけに、やっぱりガイドは要るなあというのが読後の正直な思い。次は、鈴木道彦氏の『プルーストを読む』へ。2015/08/07