内容説明
二十一世紀最高の文学『失われた時を求めて』の作家の生涯と作品の形成過程を、プルースト研究の第一人者が、同時代の文化的、社会的背景を踏まえて、多角的かつ鮮やかに描く。肖像口絵図版多数、地図、詳細索引。創見にみちたマルセル・プルースト伝の決定版。
目次
第1章 出身
第2章 少年時代
第3章 高等中学時代
第4章 長い休暇―一八八九‐一八九一年
第5章 「バンケ」誌から「ルヴュ・ブランシュ」誌へ
第6章 『楽しみと日々』の成立過程
第7章 ジャン・サントゥイユの楽しみ
第8章 『ジャン・サントゥイユ』からドレフュス事件へ
著者等紹介
タディエ,ジャン=イヴ[Tadi´e,Jean‐Yves]
1936年生まれ。高等師範学校卒。文学博士。パリ=ソルボンヌ大学教授
吉川一義[ヨシカワカズヨシ]
1948年生まれ。東京大学仏文科卒。パリ=ソルボンヌ大学文学博士。都立大学教授
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感想・レビュー
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夜間飛行
58
男の友人への手紙を読むと(作中のアルベルチーヌへの恋がそうであるように)プルーストの恋は絶えざる嫉妬であり痛みそのものだった事がわかる。彼は書く事によって痛みを罪に変換していったのではないか。現実の前で無力な彼の痛みは、シャルリュスやヴァントゥイユ嬢ら作中人物に仮託されグロテスクな罪悪の相を帯びていくが、それによって社会への問いに強化されたとともいえるだろう。作品に血肉化された罪悪は、もはや一人の無力な青年の憧れや痛みではなく、芸術的探求に他ならない。そうした所はバルザックやボードレールの血を引いている。2016/03/06
NAO
20
『失われたときを求めて』を読んでいるので、その参考書になればと思って読んでいる本。プルーストの思想形成にかかわりの深かった出来事や物事が、詳細に記されている。プルーストは、見たこと、聞いたこと、経験したこと以外は書かなかったそうで、作品のほとんどの描写には何らかの典拠があるのだとか。登場人物のちょっとしたおしゃべりやしぐさにさえもモデルがあり、それが逐一記されていて、とても参考になった。2015/07/23