出版社内容情報
生者の言葉でこの世のすべては語れない――。日常の狭間にひそむ「怪異」を体験者たちから聴き集める。怪談実話の名手の原点。解説 朝宮運河
内容説明
科学技術がめざましい進歩を遂げた現代においても、怪異の体験者はあとを絶たない。異形の者の来訪、説明のつかない不可思議な現象、確率的にありえないシンクロニシティ。ふだんは忘れているけれど、誰の意識の奥底にもそんな記憶がひそんでいる。体験者たちが語った怪異を、怪談実話の名手が淡々とした筆致で綴る。書き下ろしあとがきを加えた新装版。
目次
1 忘れられた記憶
2 怪の棲む場所
3 怪を見るひと
4 学生時代
5 怖い宿
6 再会
7 夢
8 いにしえの怪
9 タクシー
10 酒場にて
著者等紹介
福澤徹三[フクザワテツゾウ]
1962年、福岡県生まれ。ホラー、怪談実話、クライムノベル、警察小説など幅広いジャンルの作品を手がける。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒデキ
52
怪談を語ってきた著者が、勝手書かれた初に実話本だそうです。 上手い文章で書かれた実話は、時に創作かと思ってしまうようでした。 怪談収集は、ヒトのちょっとした記憶を引き出すということは、我々もいつの間にか不思議な体験をしているかもしれないと思わせてくれます。 今も私に何かが起こっているかもしてない なんて考えてしまいました2023/08/16
JADE
17
“怪談実話の名手”福澤さんが訊き集めた怪しい話。「怪異を体験しているひとが、わたしのまわりに極めて多い」そうで、「怪異を体験するひとは、どこかでつながっているのだろうか」と考察しておられる。自分の周りでそういう話を聞かないのは、俺自身がそっち系ではないからだろうか。いや、きらいじゃないんだけどな、とは思うのだけれど。2~3ページの短いけど怪しい話が延々と続く。実話だという先入観のせいか、どの話も妙にリアルに思えた。猛暑の休日、ちょっと涼しくさせていただいた。 ☆3 2023/07/30
mittsko
14
売れっ子、福澤先生最初の怪談実話物。さすがの筆力であります。こんだけ怪談ばかり読んでいるボクにも、しっかり怖いものな。ご自身もあとがきで書いておられるように、文体に『新耳袋』や『「超」怖』の影響を感じた。朝宮運河さんによる「解説」付き。勉強になる ※ 2002年8月、メディアファクトリー刊の原著が「ご当地怪談」物の最初期の一冊だときいて、読んでみた。なるほど、著者居住の福岡、北九州地域の怪談ばかりが並んでいる。ただし、ご当地性がことさら際だてられるわけではない。地域性はさらりと触れられる程度。2023/08/20
ハルト
11
読了:◎ 淡々としていながら、ぞわりとくる実話怪談随筆集。著者の体験やその周囲の人々の体験が書かれており、怪異というものが、著者にとっては身近に存在するものだというのが実感として伝わってくる。シンプルだからこそ、余計に骨身に染みる恐ろしさがある。どの怪異譚も短い随筆であるけれど、それでもしっかりと恐ろしさに囚われる。そして実話というのがやはり強い。どこかで誰かがこんな経験をしたのかと思うと、派手さがないからこそじんわりとした恐怖が襲ってくる。読みやすく怖かった。2023/07/28
Porco
11
元本は2002年刊行だ。 話の内容や言葉選びに時代を感じさせてしまうのだがそれもまたよろしい。2023/06/18