出版社内容情報
表題作のほか、審判(武田泰淳)/夏の葬列(山川方夫)/夜(三木卓)など収録。高校国語教科書に準じた傍注や図版付き。併せて読みたい名評論も。
原 民喜[ハラ タミキ]
内容説明
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある、戦争をテーマにした短編小説集。教科書に準じた注と図版を付した。理解を深める名評論も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
空猫
36
教科書に載る、名作アンソロジー。ヒロシマのあの日…原民喜『夏の花』。植民地時代の上海で…武田泰淳『審判』。戦争の悲劇はこんな処にまで…山川方夫『夏の葬列』。終戦前夜の満洲国で…三木卓『夜』。三十年後に背中に刺さったままのガラス片を取り出して…林京子『空罐』。あの収容所で諦めたような微笑が…遠藤周作『カブリンスキー氏』。戦争末期、前線へ向かう中年兵士たち…大岡昇平『出征』。殺さねば殺される…ティム・オブライエン『待ち伏せ』。体験者が紡ぐ言葉は熱量が迫力がハンパなかった。2023/08/28
ちゃこばあ
33
夏の花は原爆投下時の広島の陰惨な光景。武田泰淳さんの審判は兵士として犯した罪に苛まれる者。山川方夫の夏の葬列も短くして強烈。終戦前日の記憶を葬るために訪ねた地で更に一生続く罪の思いを抱えることに。 他5編。どの作品もとても心に刺さる。そして高校の教科書に載っていたことに驚いた。過去のことであっても忘れてはいけない。戦争で亡くなった人、どちら側にいたにしろ傷ついた人々、全ての人の心が安らかになれますように。2018/08/16
まると
22
戦争を想う8月。原民喜「夏の花」を読みたいと思って手に取ったが、他の作品もなかなかの秀作でした。武田泰淳の「審判」は終戦2年にして中国での日本の戦争責任を鋭く問うたもの。中国で終戦を迎えた邦人の内情をよく表しています。1983年にこれが高校の現代文の教科書に採用されたということ自体、素晴らしい。林京子「空罐」は両親を原爆で亡くした女の子のエピソードが切なく、涙腺が弛んだ。昭和の作家の作品は視覚、嗅覚の描写が美しく、当時を知らない現代人にもその場の情景が浮かんでくる。教科書に載って然るべき名文ぞろいでした。2024/08/16
リョウ
8
戦争にまつわる短編集だが、教科書に掲載された作品であり、考えさせられる内容のものが多かった。単に戦争と言っても原爆、満州からの引揚げ、外地へ駆り出された兵士、疎開先での思い出など様々な情景が描かれており、学ぶものも多い。2024/10/03
あっくん
8
丁度教科書に載っていた作品を読みたいと思っていたところにナイスな本を発見。こちらは戦争をテーマにまとめられた本。「夏の花」「審判」など8作品。原子爆弾、アウシュヴィッツ、満州…読みながら、痛ましさに何度も涙がこみ上げた。 特に高校生の時は授業中寝てばかりいたので恥ずかしながら初見が多いけど、「夏の葬列」は覚えている。授業中に半泣きになりながら「戦争が悪いんだ、この人のせいじゃない」と叫びたくなったのを覚えてる。再び読んでその気持ちは変わらないが、最後の彼の足取りへの印象は変わった。2017/09/26