出版社内容情報
学問には普遍性と同時に「故郷」も欠かせない。経済用語に支配され現実離れしてゆく学問に活力を取り戻す方法を体験に基づいて論じる。「猪木武徳」
内容説明
学問は現実に対してますます力を失い、衰退に拍車がかかっている。「知の芸能化」や「専門主義化」を克服するにはどうすべきか。その処方箋として、普遍性の追求と同時に「故郷」を持つことの大切さを、自身の研究体験を紹介しながら提言する。
目次
第1章 学問はなぜ閉塞状態に陥ったのか
第2章 体験的学問論―全共闘と教養主義
第3章 「知ること」と「わかること」
第4章 現代はなぜ思想を見失ったか
第5章 「保守主義」から読み解く現代
終章 学問の故郷
著者等紹介
佐伯啓思[サエキケイシ]
1949年奈良県生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専攻は社会経済学・経済思想史。著書に『隠された思考』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『「アメリカニズム」の終焉』(中公文庫、東畑記念賞)、『現代日本のリベラリズム』(講談社、読売論壇賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
24
’06年初出に著者の主観と体験による学問論(14頁)。知識は、真理追究か、社会の役に立つか、純粋な楽しみか、の3つに分かれる(40頁)。今となっては、純粋な楽しみが一番幸せかもしれない。片意地張っても肩が凝るだけ。小林秀雄と岡潔の対談『人間の建設』(110頁)は確か新潮文庫にあった。知識と文化にかかわること。知っているものを自分で再構成できるかどうかが重要で、わかっていないと再構成できない(122頁)。頭のよさには2種類あり、ひとつは、脳の神経伝達速度の物理的運動能力の優秀さ。2015/02/12
masabi
15
筆者の意見に基本的には賛同しつつ、所々で反対というところか。保守主義とは、人間は不完全な存在だとする人間観に立脚し、人間を超えた伝統や慣習を維持することを志向する。この保守主義が冷戦下で革新に対する保守として誤用されたことで現在に続く保守と革新の捻れが現れてくる。太平洋戦争について日本にも事情があったとしても侵略戦争だったことを否定できないように思える。どの程度までの対米従属が日本の国益に叶うかどうかは議論が必要である。2016/05/26
双海(ふたみ)
15
学問は現実に対してますます力を失い、衰退に拍車がかかっている。「知の芸能化」や「専門主義化」を克服するにはどうすべきか。その処方箋として、普遍性の追求と同時に「故郷」を持つことの大切さを、自身の研究体験を紹介しながら提言する。 (カバーより)2014/12/13
ネムル
7
リベラリズムの脆弱さを説き、保守から現代を語るのはいいが、それが学問論として精神的なものに繋がるとなんだかなーと。学問には個々の国の伝統なり考え方に根差してるから云々、てのは同意出来るんだけど。2018/04/11
田中峰和
5
私見としては教養に目的を求める傾向が強い現代の教養論には抵抗がある。瀧本哲史の「僕は君たちに武器を配りたい」に代表される功利主義的な教養主義が京大にも浸透してくるのは疑問。学者が高等遊民としては生き残れない現状。「学問界にも市場経済原理が一気に入り込み、学問はサービス産業へと姿を変え、高等遊民の知識サービスの小売業者へと姿を変えられつつあると」述べる著者。70年の左翼学生運動と三島の割腹を比較しながら、三島の行動に共感をもったという著者。ダラダラ続く全共闘運動より1日で終わった事件が印象に残ったのだろう。2015/02/17
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- 和書
- 猫橋 集英社文庫