出版社内容情報
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内容説明
描かれているのは、昭和の年号とともに生きてきたサラリーマンのごく普通の日常に過ぎない。しかし、エッセイとも日記とも思えるスタイルと軽妙洒脱な文章を通して、それが大変な出来事の積み重ねであることが分かってくる。卓抜な人物描写と世態風俗の鋭い観察によって、昭和一桁世代の哀歓と悲喜劇を鮮やかに描き、高度経済成長期前後の一時代をくっきりと刻む。
著者等紹介
山口瞳[ヤマグチヒトミ]
1926‐95年。東京生まれ。麻布中学から第一早稲田高等学院に入学するが自然退学。戦後、働きながら國學院大學を卒業する。1958年、サントリーに入社し、「洋酒天国」の編集者として活躍する。62年『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞、79年『血族』で菊池寛賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
166
第48回(1962年)直木賞。 昭和30年代の東京の風景が 闊達に 描写された作品である。 東西電機に働く 江分利一家の行動が 微笑ましい。平凡な ありふれた日々が 出来事が 新鮮に 今に伝わる。 私小説風の 心落ち着く、作品だった。2018/08/22
kaizen@名古屋de朝活読書会
140
直木賞】給与生活者のようで、没落事業家の師弟のようで、病弱家族のようで、平凡な, every man。戦争による景気の乱高下の波にのまれた父。高度経済成長の立ち上がり時期の、ステレオはじめ電化製品を広告する満。職業の位置づけが憎い。著者は、一見、斜に構えているようで、人間の本質的なおもしろさを書こうとしているのかもしれない。会社の寮にありがちな軋轢も。2014/08/20
nemuro
47
久々の“列車旅&書店巡り”に持参するも車窓の景色と睡魔に誘われ読了ならず。帰宅後、翌日の読了。2011年2月「リーブルなにわ」(その後、閉店。現在は「文教堂書店札幌大通駅店」)での購入。『婦人画報』(1961年10月号~翌年2月号)に連載。「連載を終え、単行本化の準備をはじめていたその年の暮、直木賞の受賞が決定。ときに山口瞳37歳。まだ1冊の著書もなかった」らしい。妙に聞き覚えのあるタイトルと思ったら、1975年3月~NHKでドラマ化(出演:杉浦直樹、樫山文枝/脚本:山田太一/語り:小沢正一)。なるほど。2024/10/04
かえで
33
藤沢周平曰く「直木賞受賞作では一番の異色作」。小説?エッセイ?随筆?そのどれでもない。作者がモデルの小市民、江分利満(=Every Man。普通の人ということ)の日常、生活が徹底して描かれている。父親の事業の失敗、家族の病気、戦中派の戦争への嫌悪…三島由紀夫が「あれはいいね、ジーンとした」と絶賛したのも頷ける。「才能がある人間が生きるのは何でもないんだよ。宮本武蔵なんて、ちっとも偉くないよ、アイツは強かったんだから。本当に偉いのは一生懸命生きている奴だよ、江分利みたいな奴だよ」という所が本当に素晴らしい。2015/04/05
空猫
27
【第48回直木賞】再読だった。自伝的エッセイのような作品。もはや戦後ではないと言われた時代。昭和元号と同い年の一介のサラリーマンが主人公。この時代の庶民の生活を知るには良い本である。その家族との日常を描きつつ、日本の文化が廃れつつあるのを憂いた何とも奥深い作品でした。2024/04/07