内容説明
ポリーニ、アルゲリッチ、グールド、ホロヴィッツ、リヒテル、ツィマーマン…世界の名ピアニスト29人に光をあて、その芸術の特性と演奏家独自の魅力を明晰な文章で論じる。ピアノ演奏の歴史をふり返り、文化的背景の考察もふまえて演奏家の内面に鋭く分け入り音楽の深い魅惑を指し示す。不世出の音楽批評家が、ピアニストたちの美の世界の魅力を語る愉しくも華麗な演奏論。
目次
グルード
ベネデッティ・ミケランジェーリ
ルビンシュタイン
ゲルバー
ホフマンとソロモン
アルゲリッチ
アシュケナージ
グルダ
ギレリス
バックハウス〔ほか〕
著者等紹介
吉田秀和[ヨシダヒデカズ]
1913年9月23日、日本橋生れ。東京大学仏文科卒。現在、水戸芸術館館長。戦後、評論活動を始め『主題と変奏』(1953年)で指導的地位を確立。48年、井口基成、斎藤秀雄らと「子供のための音楽教室」を創設し、後の桐朋学園音楽科設立に参加。57年、「二十世紀音楽研究所」を設立。75年『吉田秀和全集』で大佛次郎賞、90年度朝日賞、『マネの肖像』で読売文学賞受賞。2006年、文化勲章受章。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そり
18
グールドの音がある。深く集中し潜った底で奏でられる、彼個人の祈りのような音が。著者も最大の魅力の一つに「言語に絶する精緻と瑞々しさを合わせもつ抒情性」をあげる。そして、最初のゴルドベルク変奏曲には、「知性とデモーニッシュな魔力とは黄金の均衡を保っている」。ベートーベン後期ピアノソナタには「非感傷的なアレグロ」でありながら「速さの中にみち溢れている抒情の氾濫」との言葉。音楽の秩序のなかに確かにグールドがいると感じる。その音はとても愛らしい。2015/09/12
風に吹かれて
16
再読。随分以前になるが、サイードから進呈されたベートーヴェンのピアノ・ソナタ楽譜に関わるエピソードやフリードリッヒ・グルダの演奏に触れる大江健三郎の小説で気になっていたグルダのものでベートーヴェンのピアノ・ソナタをひと通り聴いてみようと決めて実際に購入して鑑賞したのは本書のグルダを評して「現代のもっとも迫力のある、しかも最も虚飾のない直截なベートーヴェンの像を伝えるものと考えている。」(p183)という文章に押されてだった。など、故吉田秀和氏に導かれて聴いた曲や演奏は少なくない。➡2020/01/24
ウノ
7
吉田秀和さん知らなかったですけど、文章読んでるだけでも音楽を聴いてるみたい。少し前の世界のピアニストについての本。グールドの章は何回読んでも面白い。2019/03/15
訪問者
5
やはり吉田さんはグレン・グールドについて書く時が一番楽しそうだ。本書を読むと昔、それぞれの評を読み、グールド、ミケランジェリ、ポリーニ、アルゲリッチを聴いていった在りし日が蘇るようで懐かしい。2025/06/17
訪問者
4
久しぶりに吉田秀和を読む。吉田氏の書いたものを読んでグールドやミケランジェリ、そしてグルダ、ポリーニ、アルゲリッチを聴き始めたことを思い出しながら、懐かしく読み進める。どれも素敵だが、グールドについての文書が、一番面白く読める。2024/07/02