内容説明
「不変量」とはなんだろう。聞きなれない言葉かもしれない。しかし、その実体にはさまざまな場面ですでに遭遇している。たとえば、2つの三角形が合同かどうかは辺や角度で判断するが、結果、合同なら面積は等しい。すなわち「図形の面積は、図形の合同に関しての不変量である」と言える。なぜ表面的には見えにくい「不変量」に着目するのだろう。それは問題解決のための有力な武器となるからだ。振り返ってみれば、ガロアの着眼点もそこにあった。解放習得の学校数学とは一味ちがった、上級の発想に触れるチャレンジングな7講。数学センスのステップアップのための読み物。
目次
第1章 不変量としての対称性、ガロアの方程式論
第2章 オイラー数
第3章 15パズルの数理
第4章 鏡に映された世界
第5章 結び目の多項式不変量
第6章 リンケージの配置空間
第7章 平面3角形の不変量とモジュライ空間
著者等紹介
今井淳[イマイジュン]
1963年生まれ。東京大学数学科卒業。専門はトポロジー、結び目理論、特に結び目のエネルギー。現在、首都大学東京准教授
寺尾宏明[テラオヒロアキ]
1951年生まれ。東京大学数学科卒業。専門は特異点、組み合わせ論、特に超平面配置に関連する数学。現在、北海道大学教授
中村博昭[ナカムラヒロアキ]
1965年生まれ。東京大学数学科卒業。専門は整数論。現在、岡山大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がくちゃびん
5
大変興味深い内容が目白押し。15パズルで解ける配置と解けない配置の違いは何か?それをどのように見分けるのか?また合わせ鏡にしたときに出てくる像の法則や、結び目に現れる意外すぎる対称性など、興味は尽きない。だがもっとも新鮮だったのが第7章だ。q分三角形が自分自身の相似形になるのはどのようなqのときか、という問題にモジュライ空間を使って解明するのだが、それが鮮やかでダイナミックで美しく、しかも導かれるのは意外な結論と、本当に驚かせてくれる。数学好きの方にぜひ読んでいただきたい良書。2015/05/22
NагΑ Насy
3
4章の鏡にまつわる数学と1章のガロアのところ、あとはガガンボの足の変換について読む。独立した7つのトピックス。高校生のときに複素数の授業でちらっと5次方程式の解のことが触れられて、そのまま10年以上わからないままだったのが糸口が見つかる。どうやら数学科の学部の講義でやる代数学の重要な定理と、根号を用いて5次方程式の一般解がかけないということが深く関わっているらしい。2014/04/09
廃
1
「不変量」に関心を持ったのは特殊相対性理論の描像を考えていたとき。時間の遅れや長さの短縮が“そう見えるだげ”なのか(その観測者にとっては)実際にそうなっているのか?という疑問が、「ローレンツ変換不変量」が実体で、長さや時間がローレンツ変換された量と光速度有限による見かけ上の変化とはまた別という理解で落ち着いた。 http://blogs.yahoo.co.jp/tong_poo_h/10643311.html
ほにょこ
0
★★★☆☆ くどいくらいに分かりやすく書かれていたところもあれば、 無理やり高度な内容を詰め込んだようなところもあり、バランスがおかしいような気が。 もっと詳しく知りたいところがいくつかありました。 2016/07/04
disktnk
0
身の回りの図形や鏡像、紐の結び目などに潜む、数学的不変量に着目して、現代数学のエッセンスを詰め込んだコラム集。トポロジーの概念、ガロア理論やモジュライなどが登場するが、専門書ではないので、深いところまでは踏み込まない。あくまでも、難解だと思われがちの現代数学を、読者の興味が持続するような範囲で、著者の言葉で語られるところがよかった。“天下り的に与えられる関数μの概念”(p184)だったり、“偽りの愛の結び目”(p208)が笑える。コンパクトなどを、イメージ先行で説明しているのも面白い。2013/07/06
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