出版社内容情報
〈民族〉は、いかなる構造と機能を持つのか。血縁・文化連続性・記憶の再検証によって我々の常識を覆し、開かれた共同体概念の構築を試みた画期的論考。
内容説明
“民族”は、虚構に支えられた現象である。時に対立や闘争を引き起こす力を持ちながらも、その虚構性は巧みに隠蔽されている。虚構の意味を否定的に捉えてはならない。社会は虚構があってはじめて機能する。著者は“民族”の構成と再構成のメカニズムを血縁・文化連続性・記憶の精緻な分析を通して解明し、我々の常識を根本から転換させる。そしてそれらの知見を基に、開かれた共同体概念の構築へと向かう。文庫化にあたり、新たに補考「虚構論」を加えた。
目次
第1章 民族の虚構性
第2章 民族同一性のからくり
第3章 虚構と現実
第4章 物語としての記憶
第5章 共同体の絆
第6章 開かれた共同体概念を求めて
補考 虚構論
著者等紹介
小坂井敏晶[コザカイトシアキ]
1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
86
小坂井氏はなにゆえこんなに面白いのだろうか”しかし、このように矛盾を妥協的に解消するのではなく、逆に矛盾をもっと先鋭化することから、より満足な解答が生まれないだろうか”本のテーマや内容もさることながら、捉えずらい物事を人はどのように考えたらいいのかを学べる素晴らしい一冊。2017/12/16
マエダ
73
再読。小坂井敏明氏は本当に面白い。正直全冊いい。根元の伝えたいことはどの本も一緒であると思うがいい。もっと流行っていいと思う。みなさん読んでみてください。2018/06/06
おさむ
42
我々が当然視している「民族」という概念を文化、記憶、歴史、政治など様々な視点から分析して、それが「虚構」に過ぎないと説く読みごたえある論考。一方で我々の社会は虚構から逃れることはできないという現実も指摘しており、民族間の紛争が激しくなるいま、一度立ち止まって物事の本質を考える意味では貴重な一冊。著者はフランスで生活する哲学者。日ごろから少数派であるからこそ、こうした複眼的な思考ができるのでしょう。久しぶりに頭がフル回転する読書を楽しめました。2017/10/12
アナクマ
37
民族同一性は虚構に支えられた現象であることを論証する。さらには主体自由平等正義責任犯罪罪罰時間過去歴史幸福愛信頼苦悩死老い‥すべて虚構だと。にもかかわらず、それらのことに根拠があると思えなければ人間の生活はありえない、との立場。話題の「サピエンス全史」では、虚構を支持する心象が人類を人類たらしめたとしている(らしい。未読)。あれもこれもどのみち虚構なんだろうが、そうとわかったうえで信じてみるのとそうでないのとでは、あれが違うな。風通しが。「全史」を読む前に、2010年代前半のマイベスト文庫を再読。2017/11/28
踊る猫
26
ナンバーガールは「答えを求めるな/本質なんてどこにもない」と歌った。本書は平たく論理的に、その「色即是空 空即是色」に通じる理論を解き明かす。民族とはなにか。虚構とはなにか。記憶とはなにか……哲学や科学などの知見を駆使し、著者は私たちが信じているものが「虚構」であることを解き明かしていく。だが、それがいけないというのではない。逆だ。その「虚構」があるからこそ私たちは自己同一性を保ち、健全な社会を作って生きられる。一読しただけでは呑み込めなかったところも多々あるが、私は本書と長くつきあっていくのだろうと思う2021/01/13
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