内容説明
厳格な祖父、口やかましい父が支配する、冷たく思いやりのない家庭を憎み、菊男は町の小さな靴屋に出入りするようになった。子供のいない靴屋夫婦と菊男の間に、いつしか奇妙な疑似親子関係が出来ていく。二つの家庭を行き来する菊男は、やがて父や祖父も同じような場所を持っている事に気付いた──。祖父、父、長男の三世代の男達と、彼らを支える女達の愛を描く異色長編シナリオ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎 周司
10
文章構成のお手本とする向田邦子は、小説もいい、エッセーもいい。しかし、元来は脚本家である。我が青春時代には『寺内貫太郎一家』や『阿修羅のごとく』『あ・うん』などのテレビドラマにくぎ付けになっていた。これらの脚本が、向田邦子の作品だとはその当時知らなかったのだが、改めて文字で読むと、その構成力に驚かされるのである。昭和の初めの香りが漂う「イキ」な文章である。2017/10/25
ワカ
3
厳格な祖父、健吉が家と外で見せるギャップが感情移入出来、可愛くも感じる。 本音で心を許せる場所と時間がうらやましく感じた。2015/03/09
Hisako Miyake
2
向田邦子の脚本を読むのは初めて。登場人物がそれぞれ私のなかで、まるで目の前でドラマを見ているように動きだした。確かにナレーションもあるが、セリフとしぐさだけで 心の中の声が聞こえてきそうだ。実際のドラマを見てみたい。 2012/11/23
びゃんびゃん亭
1
流石の巧さ。ドラマの中で登場人物の二面性を描くことはできないと言っていた著者だけど、家庭の二面性、家庭と向き合ういち人間の二面性は完璧に描いていた。愛せど憎み、憎めど恨めず、結局は抱きしめるしかない。ディテール(下着と靴、納豆)の言葉はもちろん、ドラマ前提の色彩コントロールまでやってのける。すごすぎる。。 著者本人はキャリアウーマン、ひとりで成功した女性の代名詞なのに描かれる女性はみんな男性基準で動いて生きていて時代を感じた…あれだけ成功しても結局ここまで歪んだ父性に支配されているの、少ししんどくもある2020/10/24
ひじき
1
再読。シナリオ作品である。ドラマ(昭和52年TBS放映)を見たときは、その前に読んだ原作とあまり結び付かなかった。しかしこのシナリオはドラマのまんまなのだ(当り前か)。36年後のいま読んでいても、ドラマのシーン、音、匂いがふわーっと立ちあがってくる。根津甚八のなんと鮮烈な印象だったことか。興奮して吐き出すせりふ、抑えたトーンのナレーション、そしてしなやかな体の動き。一発で惚れたわよ。向田邦子も彼に惚れてこのドラマを書いたらしい。しかし菊男(根津)は家に帰ってサラリーマンなんかになるべきじゃなかったと思う。2013/08/15
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