内容説明
伝説の大学受験国語参考書、ついに復刊。そこには、「たった一つのこと」しか説かれていない。それは、論の展開を正確に「追跡」して論旨を把握すること。1959年の刊行当時、知識偏重から論理重視への転換期にあった受験現代文の特質をみごとに捉えた、今に通じる画期的な方法だった。さらに、本書は「人間主義・合理主義・人格主義」を柱とする近代思想の啓蒙書でもあった。ポスト・モダン以降の思想が批判してやまない「近代」が志向していたものが忘れられつつある今こそ、本書を読む意義がある。20年以上も定番であり続けた名著に新たな命が宿るときが来た。
目次
読者へのことば―「たった一つのこと」
第1章 予備
第2章 前提
第3章 方法
第4章 適用
後記にかえて
著者等紹介
高田瑞穂[タカダミズホ]
1910(明治43)~1987(昭和62)年、静岡県生まれ。東京帝国大学文学部国文学科卒業。大学院では国文学のほかに哲学も専攻。府立第一中学校(現・日比谷高校)教諭、成城高等学校(旧制)教諭、校長などを経て、1954年に創設された成城大学文芸学部教授に就任。その後、成城大学名誉教授。近代文学研究の第一世代として活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
115
ちくま文庫での再読です。これには国語の入試用の参考書で有名な石原先生のあとがきがあります。私の受験時代をいつも思いだします。現代国語の対策はこの本と入試問題集だけでした。最後に15の近代文学の紹介があります。いつも読もうと思っていましたができませんでした。今度は挑戦しようかなと思っています。2018/11/12
びっぐすとん
19
図書館本。往年の名参考書と話題なので借りてみたが、これも字が小さくて全部は読みきれない😭やはり参考書は参考書サイズで読みたい。パラパラと読んでみたが、本当に現国が出来ない子はここに書いてあることが理解出来ないんじゃないだろうか?設問の問いの日本語が堅苦しいね。というか今私達が普段使っている日本語のレベルが当時と比べて下がっている気がする。平易な言い回しと単純な語彙しか使ってない。言葉は時代を映す鏡。日本語が貧相になってきている、60年前の日本語の品性の美しさ、知的レベルの高さに気づかされる。2022/01/08
bandil
6
小西先生の「古文研究法」に痺れたので、これに近い物をと物色して辿り着いたのが本書。初版は1959年。当時の高校生の受験参考書だ。で、やはり、参考書を超越していた。国語は教えにくく、教わりにくい科目なのに、こうも「形」として提示できるのかと感動を覚えた。筆者は「追跡」と「停止」が要だと言う。今の時代は加速の時代なので、この「停止」という概念の国語での使用が心に響いた。巻末の読書リストもいずれ読みたいと思う。いやはや、昔の人は恐ろしい。名著。2019/07/28
kousan
5
現代文の名著ですね。買っておいて後で読もうと思っていましたが、文章の指導が必要になったので改めて読み直しました。本作品を上回るものはそうは出ないのではないかと思わせる内容と思います。 2022/09/29
しんえい
4
「現代文とは、何等かの意味において、現代の必要に答えた表現のことです」(14頁)。筆者の問題意識から「出発」して、内面的運動感覚(発展的表現を発展として、流動的表現を流動として把握する内面の感覚)に従って「追跡」し、「停止」して問われていることに対して答える。大学入試現代文の本質は今も昔も変わらないようである。読解するということは、読み手の中で理解と批判との2つが完結することである。2023/03/14