内容説明
著者は20世紀フランスを代表する美術史家。師マール、弟子バルトルシャイティス、シャステルらとともに、普遍主義的美術史の学統を担った。かたちは生きている。常に変容の可能性をはらみ、多様に現象する。芸術作品を取り囲むさまざまな要因、すなわち空間や素材、時間、様式もまた、変化に対して開かれた生ける存在である。かたちが生命を持つということは、それが自由であろうと望むことにほかならない。本書は、かたちを生み出し変化させる関係と環境の全体をしなやかで強靱な思考の網にかけ、“自由”を漁ろうとする試みである。貴重な証言「石の言葉」を併載する、待望の新訳増補決定版。
目次
かたちの生命(かたちの世界;空間におけるかたち;素材におけるかたち;精神におけるかたち;時間におけるかたち)
手を讃えて
石の言葉
著者等紹介
フォシヨン,アンリ[フォシヨン,アンリ][Focillon,Henri]
1881‐1943年。フランスの美術史家。ディジョン出身。父は版画家。エコール・ノルマルに学び、リヨン大学教授兼同市立美術館長を経て、24年パリ大学教授、38年コレージュ・ド・フランス教授
阿部成樹[アベシゲキ]
1962年生。東北大学大学院博士課程修了。パリ大学美術史学博士。現在、山形大学助教授。西洋近代美術史専攻
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感想・レビュー
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keisetsu
2
本書の「かたち」は「表現」とか「着想」なんかのニュアンスも含んだ、ただ単に芸術作品内に表れているものにとどまらない意味合いがある。父親が版画家であった影響かフォシヨンは写真アンチ2023/06/19
Fumoh
1
フランスの美術史家アンリ・フォションの美術評論。「かたち」という独特な表現は、はっきりと説明があったようには思えず、何のことを言っているのかわかりにくかった。自身は芸術家でないためか、抽象的な論理が多く、またいささか主観的な印象を詩的な表現にかえて論理に組み込んでいる(これはフランスらしいと言える)箇所が多く、そのそれぞれの意味が不分明なため、学的であるとは言えなかった。ただしさまざまな芸術を、彼なりに分析し、知識を披露していくので、その中で学べることも無くはないかもしれない。2024/01/18
cocomero
1
かたちの生命とそれに関連深い、手を讃えて、石の言葉という三つの試論が訳出・所収されている。かたちは、時代や地域を飛び越えて、芸術家の精神に訴えかけ、精神の行為としての手仕事でもって、普遍性と同時に特殊性を帯びながら、引き継がれると同時に新たに生み出されていく、絶えず変化し続ける流れのようなものとしある。そうした流れとしてのかたちの源泉は、複数あり、それぞれ途中で枝別れしたり、その枝別れしたものが他から枝別れしてきたものと交わったりして、複雑な模様を形成する。2019/09/21
astrokt2
0
未レビュー2009/05/30