内容説明
「われわれは群衆と芸術家たちの目を惹きつけるものすべてについて語るであろう」。19世紀中葉、フランスの美術革新期において、一部の階級の独占物であった絵画を広く公衆にもたらし、その蒙を啓くことを批評家の任務としたシャルル・ボードレール。モデルニテの成立期における芸術の状況を社会的・歴史的に位置付け、決断し、創造していく芸術家・批評家でもあった詩人の言説を熟読し、再検討するとともに、ドラクロワ、クールベ、マネら同時代の画家との交渉を通して論じる。
目次
1 群衆の中の批評家―シャルル・ボードレール
2 ダンディ、それとも芸術家?―ウージェーヌ・ドラクロワ
3 ナルシスと民衆―ギュスターヴ・クールベ
4 “現在”の発見―エドゥアール・マネ
5 風景の中の芸術家―シャルル・ボードレール
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
9
美術批評家としてのボードレール論が中心をなす。19世紀の中盤、美術が王族・貴族のものではなくブルジョアに解放される時代。群衆という概念が成立した時代。その時代に美術批評家として名を成そうとした若きボードレールは、どのような歴史意識のなかにいたか。蔑視されていた「ブルジョア」を肯定的に反転し、群衆に向かって投げられる啓蒙的・かつ論争的な美術批評を示す彼の態度を論証していく。そこから、ドラクロアとボードレールの「ダンディズム」の違い、クールベとマネにおける物質性の露出とボードレールの関係などに話が広がる。2025/05/14
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