出版社内容情報
GDPでは数値化することのできない、人間の「ゆたかな生(ウェルビーイング)」とは何だろうか。経済成長至上主義を問いなおし、来るべき市民社会を構想する。
内容説明
「ゆたかさ」とは何だろう。国が経済成長を遂げ、モノが溢れかえる一方、人々のつながりは希薄化し、自然環境は破壊され、現代社会はますます息苦しくなっている。GDPという指標の下で富の増大を目指し、社会を測ろうとする経済学は、私たちの「ゆたかな生(ウェルビーイング)」を捉えることができているだろうか。経済成長至上主義を問いなおし、経済のための人間から人間のための経済へ―。国家や市場という枠組みに囚われず、独立した個の連帯からなる社会のかたちを構想する。
目次
第一章 「ウェルビーイング」はどう広がったか
第二章 GDPとは何であったか
第三章 「ゆたかな富」は「ゆたかな生」を意味するか
第四章 社会的連帯経済とは何か
第五章 互酬と協力の原理は現代にどう生きているか
第六章 経済のための人間か、人間のための経済か
第七章 ウェルビーイングをどう測るか
第八章 ウェルビーイング社会をどう創るか
著者等紹介
山田鋭夫[ヤマダトシオ]
1942年、愛知県生まれ。名古屋大学名誉教授。名古屋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専攻は理論経済学・現代資本主義論・市民社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
44
恩師の本。コミュニティと市民社会の異同、社会的連帯経済の整理、互酬人、ベターライフインデックスなど、多彩なトピックに関心を寄せる全ての人に開かれた好著である。私は、中山間地域における互酬人をどう育て、連帯経済をどう築くか? という問題意識を刺激された。研究論文執筆からははるか遠のいたが、今度書くのは英語論文と心に誓っている。なので、アダム・スミスや、J・K・ガルブレイスも読み直したい。そして、知らなかったボウルズなどの理論を勉強したい。この本で素晴らしいのは、巻末のゴシック太字で読むべき本が見つかること。2025/02/22
sayan
23
2025年現在、ゆたかさは壊れず暮らしを継続するを意味し、そのはかりかたは「ゆたかさ」を下支えする辛さや限界をどう可視化するかだ。山田はイースターリンの逆説「所得と幸福は比例しない」を採用し日本では個人・世帯の生活破綻が制度/統計に実態が反映されていないと示唆。政治や制度に信頼がない今、本書は報道にある突然の現金給付案がいかに現実を無視し、結果見落とされるニーズを誰がどう引き受けるか議論する。それは制度を暴露と記録の装置として再定義し「声をあげなくても見捨てられない構造」に対する切実さに本書の鋭さがある。2025/03/23
よっち
21
「ゆたかさ」とは何か。国家や市場という枠組みに囚われず、独立した個の連帯からなる社会のかたちを構想する1冊。国が経済成長を遂げ、モノが溢れかえる一方、人々のつながりは希薄化し、自然環境は破壊され、現代社会はますます息苦しくなっている。経済成長至上主義を問い直す、経済のための人間から人間のための経済を目指すために必要なことを考える内容で、GDPの功罪や豊かな富が何をもたらすのか、社会的連帯経済、互酬と協力の原理を踏まえながら、心身ともに満たされた幸せをいかに考えていけばいいのか、なかなか興味深い1冊でした。2025/03/06
とも
17
ウェルビーイング、成熟した社会での「ゆたかさ」をどう捉え定義し測るかについて書かれた本、最後の方にどう実現していくかも少し書かれている。 冨があればゆたかなのか、現代だとそうではないと言い切れるが、戦後の経済発展の頃は違っていたはず。時代によって捉え方が違っていることだろう。2025/03/16
朝ですよね
7
思ったよりも思想的・概念的なゆたかさに関する内容が多かった。メジャーな指数で主観的な幸福度に踏み込んでいるものは世界幸福度報告しかないらしい。2025/05/24
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- 天才は親が作る 文春文庫