出版社内容情報
日本でも人気の高いケルト文化。だが、その内実については激しい論争が展開されてきた。彼らは何者なのか? 神話と歴史学を交差させ、ケルト社会の実像に迫る。
内容説明
ギリシア・ローマやキリスト教と並ぶもう一つのヨーロッパの源流とされ、日本でも根強い人気を誇るケルト文化。だが、近年ではケルト神話やケルト音楽からイメージされるような島のケルトと歴史上のケルト人との連続性にはさまざまな異論があり、なかにはその実在を疑う「ケルト否定論」すら展開されている。では、古代ケルト人とは何者だったのか。著名な神話を入り口に、それを考古学的・歴史学的知見と照らし合わせることで、古代ケルトの生活世界へと分け入る入門書。
目次
第1章 ケルトの起源
第2章 宴と決闘
第3章 英雄の宿命―インド=ヨーロッパの遺産
第4章 文字の発明
第5章 神々と風土
第6章 オシアンの夢
著者等紹介
疋田隆康[ヒキダタカヤス]
1977年、静岡県生まれ。2007年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在は、京都女子大学などで講師をつとめる。専門は、古代ケルト史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
67
20世紀後半に、ケルト否定論が出てきた、というのはオドロイタ。ケルト文化、流行りすぎたからかな ケルトについてざっと概観。読み易いです。フィアナ物語、とかも知っときたい。 マハーバーラタも登場。 著者の写真、なんでTシャツw2023/02/13
サアベドラ
38
いわゆる「ケルト」の歴史・神話・文化の入門書。2022年刊。著者の専門は古代ケルト史。御存知の通りケルトはかなりややこしい事情を抱えているが、そこら辺の研究史の込み入った話は第1章で軽く触れられるのみで、それ以降は中世ケルト(アイルランドやウェールズの神話伝承)と古代ケルト(ローマの歴史家の記述や考古学の知見から復元されたケルト)がないまぜに語られている。要するに一応現在の論争には触れるが、大筋は従来の枠組みを踏襲するスタイル。良くも悪くも無難な作りだが、昨今の論争を知ってる人からすると少々物足りない。2023/02/08
サケ太
23
かなり興味深かった。ケルト人、ざっくりとしたイメージは持っているものの、どこに存在していたか、どのような民族などは答えられない。様々な史料を参考にしつつ、「ケルト人」の生活や信仰について迫っていく。個人的に傭兵の話は興味深い。クー・フーリンやフィンなど彼らの神話は多くのゲームなどでも取り上げられており、知っているワードも多く面白かった。2022/11/20
さとうしん
15
ケルトの神話伝説と他地域の印欧語族のそれとの比較や、古典文献、出土資料を駆使したケルト人の生活習慣、宗教思想の解説が面白い。本書によると「ケルト人」という括りは自己認識というよりは他者認識の側面が強いようで、この点は中国古代の蛮夷戎狄との比較もできそうで興味深い。2022/11/18
武井 康則
13
古代、ケルトと名乗り、自認した民族はいない。常に外部から呼ばれたグループだった。それが近代になってケルトにロマンティックな意匠がかけられ、20世紀末には音楽や芸術で注目され、実態が感じられず曖昧なまま、その末裔だとアイルランドが言って民族の証明にしようとして逆に、客観的に証明できる実態があったのかという逆風になる。本書ではケルトと言われたグループの神話や伝承、歴史の叙述などを挙げて、文化の面から、我々がケルトと呼んだ民族が確かにいたことを述べている。2024/07/04
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- 刺客が来る道 広済堂文庫