出版社内容情報
ヤマトタケルの物語は古事記と日本書紀でも食い違い、その後も都合よく改変されていった。礎となる古典になぜそんなことが起こったのか? その背景を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
9
読み易い軽い内容。著者の本は「日本神話はいかに描かれてきたか」に続き2冊めである。全体は二部構成で、まずタヂマモリについて不老不死の探求者を描き、さらに彼が人間として明治期にお菓子の神となったことを記す。次いで第二部はヤマトタケルについて述べる。彼が古事記では荒ぶる悲劇的な英雄として描かれるのに対し日本書紀は天皇に忠実な英雄として教科書に登場。そこでは古事記の標記である倭命を嫌い、書紀による武尊を用いた逆説が興味深い。江戸期以前は専らヤマトダケと言い習わされた彼が近代になってタケルとなった経緯も述べられる2021/02/19
はちめ
8
古事記と日本書紀に書かれた時代に関する書籍ではなく、古事記や日本書紀に書かれた内容がどのように変容していくかに関する本。読み物としては十分面白いが、期待していた内容ではなかった。 それでも、古事記における倭建命と日本書紀における日本武尊、ヤマトダケとヤマトタケルなど、参考になる内容もありはした。☆☆☆★2020/05/16
maqiso
3
記紀で橘をもたらしたとされるタヂマモリは、明治維新後は天皇に殉じた忠臣と評価され、和菓子業界から菓子の神として崇められるようにもなった。ヤマトタケルの物語は明治以降に普及したが、古事記の荒くれた倭建命よりも日本書紀の親に忠実な日本武尊が好まれた。焼津の由来譚のうち、一書の草薙剣のエピソードのみが改変されつつ広まっていったのが面白い。2部に分かれているがまとまりに乏しい。2021/04/28
Oltmk
3
かっての古代で描かれた「古事記」「日本書紀」の物語を明治維新以降の近代日本の人々はどのように受容・変容していったのかを描いた書籍。記紀でただの人間であったタヂマモリが御菓子の神として崇められる過程や、ヤマトタケル像の受容・変容を知る事が出来るため、近代期以降の神話の受容・変容を知りたいのならお勧めできる書籍。人が神になる部分などはもうちょっと中世神話や中世期からの視点が欲しくなってしまうが、読みやすいため大変参考になる。2020/05/09
montetsutsu
1
古事記、日本書紀がどう受け入れられていたかという視点からの本と思って読んだら、ちょっと違う視点だった。けれど、ある説話の人物が明治以降にお菓子の神様にまで祭り上げられてしまう、というような受け入れられ方の視点で面白く読めた。2021/01/24