内容説明
兎、蛙、猿などの動物が人間くさい姿で活躍する『鳥獣人物戯画』、火事と群衆、庶民の姿を活写した名品『伴大納言絵巻』、徳の高い聖の奇跡を躍動的に描く『信貴山縁起絵巻』―院政期に成立したこれらの代表的絵巻は、当時の人と社会の生き生きとした姿を満載している。登場人物とともに絵巻のなかを歩き観察する「旅」を通して、訴訟、御霊信仰、王権、女性の生き方など、中世への入り口である院政期の時代像を重層的に描き出す。
目次
1 絵巻を探る―『鳥獣人物戯画』
2 王権と庶民―『年中行事絵巻』
3 絵巻の訴え―『伴大納言絵巻』
4 謎の人物を探る―『伴大納言絵巻』
5 ことばと絵―『伴大納言絵巻』
6 聖の奇跡と王権―『信貴山縁起絵巻』
7 聖と信仰―『信貴山縁起絵巻』
8 女と家と―『信貴山縁起絵巻』
9 絵巻の話法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mahiro
8
院政期に制作されたとも言われる鳥獣人物戯画、伴大納言絵巻、信貴山縁起絵巻、年中行事絵巻についてその読み解き方時代背景などを対話形式で解説している。私も絵巻物が大好きでいずれの絵巻も部分的にではあるが実物を見た事があるので頷かれる事が多々あった。物語性がなくあまり楽しくないと思っていた年中行事絵巻(江戸時代の模本のみ現存)が廃れた宮廷行事等を復活させようとした後白河院の命によって制作されたと言うのは納得できた。絵巻特有の異時同図の解説はこれから又絵巻を見る機会に参考になる。2017/11/20
がっち
1
『鳥獣戯画』、『年中行事絵巻』、『伴大納言絵巻』、『信貴山縁起絵巻』の4つを検証しながらひもとく。対話形式であるため、すらすら読むことができる。絵巻にあまり焦点をおくことはなく、読む事がむずかしいので、こういった本はたすかる。2013/06/15
おはじき
0
決して入門ではない。絵巻が書かれた時代背景や描かれた事物を通して、中世への理解を深めるというのが目的。絵巻の全体像がなく、文中で示されている内容の確認がしづらいので、すでにこの本で触れられている四代絵巻を一度じっくりと鑑賞したことのある人向け。2023/12/01
もるーのれ
0
院政期の絵巻の代表作「鳥獣人物戯画」「年中行事絵巻」「伴大納言絵巻」「信貴山縁起絵巻」を取り上げて分析している。対話形式で論が進んでいくので、分かり易い。絵と詞書で色々な読み取り方ができるのが絵巻の面白いところではある。そして、最後に実際に絵巻を作るならという実験的な試みをおこなっているのも面白い。2019/06/01