出版社内容情報
性、倫理、欲望、信仰、偽善、矛盾だらけの脆い人間達を描き、さまざまな解釈を生んできたシェイクスピア異色のシリアス・コメディ。解説 井出新
内容説明
公爵の代理に任命された貴族アンジェロは、世の風紀を正すべく法を厳格に適用し、結婚前に恋人を妊娠させた若者に淫行の罪で死刑を宣告する。しかし兄の助命嘆願に修道院から駆けつけた貞淑なイザベラに心奪われると…。性、倫理、欲望、信仰、偽善。矛盾だらけの脆い人間たちを描き、さまざまな解釈を生んできた、シェイクスピア異色のシリアス・コメディ。
著者等紹介
シェイクスピア,W.[シェイクスピア,W.] [Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ37編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた
松岡和子[マツオカカズコ]
1942年、旧満州新京生まれ。東京女子大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
131
シェイクスピア作品にしてみると異色だと思います。性、欲望、倫理、信仰といった様々な要素に対し、矛盾だらけの人たちが登場するのが歪んだシリアスさを生み出している感じがしました。喜劇であることはあるのですが、何処となく奇妙な後味を残します。様々な解釈を生んだ問題作というのも頷ける気が。最後は結婚してめでたしめでたし、と素直に言えないのが面白くもあり、一癖ある作品と言えるでしょう。2017/01/29
絹恵
42
シェイクスピアの結婚観、結婚に見る悲劇そして喜劇、いつだってこの矛盾を孕む行為が、物語を作り、歴史を作ってきたのだと思いました。様々な法と唯一の誓いはまた別のものだけれど、そのどちらにも心は入っていないと感じてしまいます。それならやっぱり"私のものはあなたのもの、あなたのものは私のものだ。"これが幸福に繋がる真意なのだと思います。2017/03/28
おにく
37
女性に辛辣だったり、性根の腐ったやつがいたりと、シェイクスピアの喜劇を楽しむために今一度、これはお芝居の台本だと意識することが、楽しむ秘訣だと行き着きました。お芝居の結末としては、ごう慢な奴が足を掬われ、どん底に落ちた人が幸せになる。この降り幅が大きいほど、観客を楽しませる事が出来るのだと思います。この作品は特に性根の嫌らしい奴と、聡明で健気な役がハッキリしているので、物語の結末で歓喜する役と、陰気に落ち込む役の対比が面白いですね。ただ、公爵のラストのセリフは幻滅だけど。 2022/07/26
鐵太郎
21
「死には死を 早急には早急を、猶予には猶予を、類には類を、尺には尺をもって報いるのだ」という決めゼリフで最後を締めるウィーンの公爵の、ささやかな無責任な思いつきで始まったこの騒動は、喜劇としてくくるしかない結末で終わります。四組の結婚したカップルの中で、本当に幸福と自覚した人は誰? 公爵の一人勝ち? セリフ回しの面白さはあるけど、なんともはや、不思議な後味のお話でした。2016/06/22
ine
17
アンジェロは裁判官の公爵の代理的立場。後継者として自分が適任だとアピールするため、休眠していた法を持ち出し、威厳や権力を顕示します。しかし、美女イザベラの訴えに翻意して、彼女の兄の減刑を約束し騙します。彼が本当に法を大切にしたとは思えません。減刑の条件にイザベラを求める最低の自己中心的な人物ですが、そもそも権力には法に自分の裁量を持ち込む誘惑があります。「我々は脆い」だからこその法ですが、最後は罪を赦してしまう展開。これでは堂々巡りですやん。情を汲むのも素敵だけど、法や今時ならコンプライアンス大事でしょ。2025/05/02