内容説明
孤独の中で生まれた閃光にも似た作品群。謎の作家の全容。
著者等紹介
尾崎翠[オサキミドリ]
1896年、鳥取に生まれる。女学校時代から、「文章世界」へ投稿を始める。故郷で代用教員となった後、上京。日本女子大に入学。在学中、「無風帯から」を発表し、大学にとがめられ、中退。文学に専念し、「アップルパイの午後」「第七官界彷徨」で一部から注目される。1932年、病のため帰郷、音信を断つ。戦後は行商などをしていた。「第七官界彷徨」が再発見された後も執筆を固辞。1971年、老人ホームにて死去
中野翠[ナカノミドリ]
コラムニスト
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おにく
28
明治から昭和初期にかけて活動した尾崎翠さん。その瑞々しい感性は明治に書かれた事を忘れてしまいそう。下巻に収録されている“無風帯から”は、尾崎さんの作品に多く見られる、”兄と妹、兄の友人”が織りなす人間模様で、作品間でゆるやかな繋がりを持っていて、ここでは兄と妹の微妙な距離感の訳が明らかになります。また、映画評の文章が面白く、こんな私が映画評なんてと、序文で長々と弁解したり、熱烈なチャップリン愛を披露したりと、尾崎さんの素の性格が垣間見えて興味深かったです。2024/11/06
あんこ
27
最近読んだ尾崎翠作品はそんなに多くはないのですが、可愛らしくて偏屈な失恋者たちの話の他にも、この集成では色々な色を持った尾崎翠作品を堪能できました。『詩「嵐の夜空」』は吉屋信子の少女小説的なものを感じて、とても胸がしめつけられました。『空気草履』『露の珠』のような、幻想的かつお伽噺のようなものもたいそう美しく、素敵。『少女ララよ』は美しく儚げな情景が浮かび、異国情緒も相まって印象深かったです。また、そうかと思えば『瑠璃玉の耳輪』はまた不思議な雰囲気を醸し出し、小劇団の舞台で観てみたいと思ったり。2014/12/13
蛇の婿
18
この本は上巻買ったあとしばらく放置していたら、本屋から一時駆逐され、大慌てで友人と一緒にあちこち走り回ってやっと入手した直後に再版されてやれやれと爆笑した記憶があります。読み始めた直後にも3ケ月くらい行方不明になり、ずいぶん読了にも時間がかかりました。私に読まれるのを嫌がって逃げ回っていた本。ふっ、手こずらせやがって、でももうお前は俺の物だぜw へっへっへw …しかし、この人の感性はどう表現したら良いのでしょう。好きな人はとことん嵌る作家さんなのではないかと思います。私のお薦めです。2016/06/26
うえうえ
14
『露の珠』文章美しい。2020/03/06
冬見
12
ひんやりとした甘い感傷が漂う。ああ、終わってしまった。これで全部だ。ああ……。「無風帯から」「瑠璃玉の耳輪」「アップルパイの午後」は再読。大好きな作家。2019/03/30