出版社内容情報
マルクスは資本主義経済をどのように捉えていたのか? マルクス経済学の重要概念を平易に解説し、21世紀の今、いかなる可能性があるのかを解き明かす!
内容説明
搾取と貧困が深刻化する今、「階級」「疎外」「労働価値説」「唯物史観」といった、マルクス経済学の基礎概念を再検討し、現代的な意義を明らかにする、画期的な書!
目次
第1章 階級と所有(階級的な見方vsアイデンティティ的な見方;支配階級とは、剰余の利得者か、それとも生産の支配者か ほか)
第2章 疎外論と唯物史観(フォイエルバッハの宗教批判を引き継ぐ疎外論の図式;疎外が起こる原因とその克服の条件 ほか)
第3章 投下労働価値概念の意義(価格の規定因としての労働価値説は成り立たない;労働価値概念の社会的労働配分把握という意義 ほか)
第4章 マルクス経済学で日本社会を数量分析する(投下労働価値による数量分析;投下労働価値と総労働配分 ほか)
著者等紹介
松尾匡[マツオタダス]
1964年生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。博士(経済学)。専門は理論経済学。現在、立命館大学経済学部教授
橋本貴彦[ハシモトタカヒコ]
1975年生まれ。立命館大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。博士(経済学)。経済統計学とマルクス経済学を専攻。現在、立命館大学経済学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
11
マルクスの思想をソ連共産党的な発想から離脱させ、現在の視点で捉え直している。階級、疎外と唯物史観に関する部分は面白く読めたが、後半の労働価値の部分は難しくて流し読みになってしまった。マルクス関連の本を多く読んでだいぶ理解が深まってきた。2022/05/23
makio37
8
<世の中を「タテ」方向に切って「ウチ」に味方するのが「右翼」で、「ヨコ」方向に切って「下」に味方するのが「左翼」>という解釈が新鮮だった。だからお互いの批判が噛み合わないのか。他にも<貿易黒字の源泉は自国労働者からの搾取>や<課税の意義は公共サービス供給のために必要になる労働を別の部門で浮かせることにある>など、初めて触れる考え方ばかり。労働力不足を解消するには「生産拡大のための新たな投資の停止」をすればよい、との主張にも驚いた。自分がマルクス経済学を何も理解していないことが分かった。2019/01/27
浅香山三郎
8
松尾さんの本は二冊目。『新しい左翼入門』以来である。同書は左翼の思想を広く解説するやうな内容だつたはずだが、本書はマルクス経済学の全体像を解説する。 いはゆるソ連的なマルクス経済学理解を批判し、ソ連といふ現実の政治体制の呪縛から自由になつたマルクス経済学の見方を示す。 ですます調なので、ずんずん読んでしまふが、理解できたといふこととは別物。後半は図解も限定的で未消化である。2017/05/24
樋口佳之
7
入門となっていますが、入門書ではありません。「これからのマルクス経済学」への入門書です。/「全ての労働者は全ての資本家に搾取されている」/会計的把握から社会的労働配分把握へ2016/06/26
Z
5
良書。著者は置塩信雄の弟子。数理マルクスの方法でタイトル通り、マルクス系のターム「階級」「唯物史観」「疎外論」の解説を行うが最大の仕事は労働価値説の再評価。教科書的には限界効用革命で、価値など形而上学的なことを考えず、価格は生産の効率がいい水準で決まるとなり、労働価値説終わりとなる。以上を価格の規程因としての労働価値説と呼びそれが意味ないことは著者もデータを用いて証明。それでも著者は社会的な労働配分の把握としての意義を認める。マルクスは資本論で生活必需品の市場と奢嗜品の市場という二部門に市場を分けて資本主2021/12/28