出版社内容情報
近代世界に類を見ない大革命、明治維新はどうして可能だったのか。その歴史的経験から、時空を超える普遍的英知を探り、それを補助線に世界の「いま」を理解する。
内容説明
明治維新は近代世界に起きた革命のなかで最も注目に値するものだ。世襲身分制を覆す大革命であったにもかかわらず、犠牲者は極めて少なかった。平和的変革の道を探るとき、維新は大いに参考となるに違いない。本書は「愛国」「革命」「民主」の視角から近代日本の経験を抽出、これを用いて東アジアや西洋の経験を理解しようという試みである。いま直面する問題を解決するため歴史に英知を求める現代人、必読の書。
目次
愛国(問題・なぜ「愛国」を論ずるのか;定義・ナショナリズムの基本モデルと副次モデル;ナショナリズム形成の三局面―東アジア三国 ほか)
革命(問題・明治維新の謎;「復古」による「開化」―明治維新;フランス革命 ほか)
民主(問題・なぜ民主、あるいは政治的自由が必要なのか;民主化への様々なアプローチ;経路の多様性・様々なモジュール ほか)
著者等紹介
三谷博[ミタニヒロシ]
1950年広島県福山市生まれ。歴史学者。専門は日本近世・近代史。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。学習院女子短期大学助教授、東京大学教養学部教授などを経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロッキーのパパ
19
愛国・革命・民主の切り口から幕末維新を解きほぐすと新しいことが見えてくる。小説や一般向け読みものでは人物や事跡に着目するが、それらでは分からない大きな流れを知ることができた。知的好奇心が刺激される良書である。 元々市民大学での講演がベースになっているんで、分かりやすい言葉を使っているけど、内容は深い。講演じゃ理解できなかったかも。2014/02/24
おおにし
15
本書によれば、ナショナリズムとは一国を基準として「我々」と「他者」を差別する心の習慣であり、この差別意識がイデオロギーとなり国民全体に浸透してナショナリズム形成は完了する。ここで重要なのは対象となる他者があっての差別意識であるという点。中国・韓国では「忘れえぬ他者=日本」という歴史記憶が愛国心として次世代に受け継がれている。だから、日本国首相の靖国参拝で隣国の若者たちはその歴史記憶により激しい対日感情を呼び起こすのだ。愛国心は他者への憎しみと表裏一体であることを忘れてはならない。この本からそう学んだ。2014/01/11
ceskepivo
7
歴史は、その時代に生きた人びとだけのものではなく、子孫や世界の人びと共有、参照されるべきもの。そのため、普遍性を備えた答を求めなければならない、というのが著者の出発点。歴史は記憶の集合体だ。「ある事件をきっかけに集団的なアイデンティティが生まれ、それが記憶として定着すると、ちょっとした刺激があるだけで、すぐにそれを思いだす」という著者の指摘は、傾聴に値する。歴史が個々の人間の集合体で作られていることを想起させる。2024/08/06
おやぶたんぐ
5
ナショナリズムは、思考停止して耽溺するものでも、闇雲に忌避すべきものでもない。その功罪を考えるに当たって、参考になる一冊。個人的には、複雑系の諸理論や、戦略論を駆使して明治維新を論じた第4講が白眉。同じ筑摩書房の「社会心理学講義」に出てくる少数派影響理論のアプローチ(開かれた社会モデル)と繋がっていくのではないだろうか。2018/11/23
珈琲好き
5
江戸幕府が滅びた理由の一つに、国学によって育てられたナショナリズムの受け皿になれなかったというのがあるのかなと思った。2018/05/18
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