内容説明
社会は“自由”で“多様”なはずなのに、なんでこんなに息苦しい?能力主義と自己責任、家族の多様化、ジェンダー不平等、承認欲求とアイデンティティ…。現代の閉塞感に風穴をあけ「誰もが息のしやすい社会」を構想する希望の論考。
目次
第1部 居場所と承認(なぜ居場所について考えるのか;存在証明を求める社会)
第2部 不安定化する生の基盤(学校から社会への移行;変わりゆく家族のかたち;翻弄される女性の生き方)
第3部 居場所ある生を生きるために(ただの人として、声をあげる;自立しないとダメですか?;居場所ある生を生きるために)
著者等紹介
阿比留久美[アビルクミ]
早稲田大学文学学術院文化構想学部准教授。専門は教育学(社会教育、青年期教育論)。子ども・若者が育ち、生きていくことのできる社会の在り方を、教育・福祉・文化を架橋しながら考えている。子ども・若者支援団体や当事者団体などの活動から、ありうべき未来を構想中。若者協同実践全国フォーラム(JYCフォーラム)理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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katoyann
25
教育学者による居場所論である。学校価値が家族をも取り込み、社会全体が競争主義的傾向を強める中で、自己の承認がより根源的なレベルで求められるようになる。その問題を教育学やジェンダー論の先行研究から分析している。子どもはもちろんのこと、若者や大人も含めて全ての人が一生の中で評価的な視線に晒されるため、承認は日本社会の課題である。著者は、サードプレイスの重要性を解きつつ、市場価値に還元されることのないような関係ベースのオルタナティブな居場所を構想している。現代的な居場所論としてオススメしたい。2023/03/27
akihiko810/アカウント移行中
22
「居場所なき時代」に、どのようにすれば居場所ある生を生きられるか、という考察。印象度B- うーん、読みたかった内容とは絶妙に違ったかも。「具体的な居場所の提言」がもっとほしかったのだが…。あと、自分はありがたいことに「居場所のある人間」なので、特にこの本の「孤独」とかには共感しなかった。 自分の居場所としては、NPOのたまり場(さいたま)と、将棋道場。前者は適当に何をやって過ごしてもいいし、後者は幅広い年齢層の人と趣味の将棋で繋がれる。かけがえのない場所だ。あと、家族とも関係良好だし。2024/02/07
いとう
9
巻末『おわりに』に「研究書ではないから、そこまでしっかり検証できていないことでも、自由に書いていきましょう!」の出版社の声があり、著者も社会構想のための議論をはやめるためのも「論理性や実証性の穴が無くなるのを待っていては」ダメとの思いがあったようだ。これにより内容には著者の推測が前面に出ている箇所が少ないくないが、それでも、著者の鋭い分析とデータ収集力が光る。特に、p25『学校の過剰居場所化』p74『学校から外れたときのリスク増大』の項目では、現代の居場所の問題が丁寧に説明されている。→2023/11/06
LongRide Taka
6
図書館本。表題に惹かれて借りた。永く技術屋をやっている僕にとって新しい語彙に溢れいる本―過剰居場所化、ストレーター、標準家庭、ピンクワーカー、マミートラック、パワーエリート女性の名誉男性化、ルサンチマン、ロマンチックラブイデオロギー、家族幻想、家族機能の外部化、ファーストプレイス・セカンドプレイス・サードプレイス・・・。日本の世帯も磯野家から野原家へ、それ以上に変化している。居場所を用意する前に昭和的な価値スケールでは計れる社会でないってことをしっかりと認識する必要がある。示唆に富む刺激的な本だった。2022/12/18
tharaud
4
前半は今の若者が置かれた状況がわかりやすくまとめられている。後半では既存の「自立」観を批判しながら、どのようにすれば居場所ある生を生きられるか、という考察が進められる。著者の理想とする社会や人と人の関係性のあり方について同意するものの、読み進めるに連れて、自らの特権性に常に自覚的でなければならないという命題の息苦しさがまとわりついてくる。居場所を総論的に語ることの難しさか。2023/12/17
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