内容説明
中国の研究者も交えた共同研究の成果である本書は、わが国の文学史研究における「近代への懐疑」という視点、中国における「20世紀の総括」という視点、その双方からこの百年の中国文学史とそれを支えた歴史観に光を当てて、今後の中国文学研究のあり方と方向性を見定める基礎的土台を形成する。資料篇「日本で刊行された中国史」は、明治から現在に及ぶまで可能な限りの書物を収集し、目次と解題を施して、その全貌を鳥瞰できるデータベースを提供する。文学史の問題を超えてわが国における中国観が如実に反映され、広く中国研究や近代史研究にとっても重要な資料となろう。
目次
1 今、なぜ文学史か―序にかえて
2 初盛唐期における復古文学史観の形成過程
3 文学の歴史学―宋代における詩人年譜、編年詩文集、そして「詩史」説について
4 葉燮の文学史観
5 「母胎文学」の構想―中国の恋愛文学を手がかりに
6 明治期刊行の中国文学史―その背景を中心に
7 『支那文学大綱』と田岡嶺雲
8 人情の探求と小説史の構築―笹川種郎著『支那小説戯曲小史』をめぐって
9 林庚『中国文学史』を探る
10 「民間」から「人民」へ―『中国文学史』上の正統論
著者等紹介
川合康三[カワイコウゾウ]
1948年、静岡県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。東北大学文学部助教授を経て、現在、京都大学大学院文学研究科教授
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