出版社内容情報
1920年代~60年代に建てられた近代建築が次々に取り壊されている状況に対し警鐘を鳴らすため、残すべき建築とその理由を論じる
保存運動が行われながら取り壊しが決定した歌舞伎座や東京中央郵便局など、1920年代?60年代に建てられた近代建築が相次いで姿を消している。市民に憩いの場を提供し、愛されてきた京都会館も、設計者が意図した景観が損なわれる形で改修工事が進められている。一方で東京駅が華々しく復元されるなど、過去の建築に対する再評価の動きはある。しかし、一時代前の近代建築は、素材の劣化や用途の変化により、経済効率のよい高層建築に建て替えられることが多く、我々の生活基盤を築き上げたという存在価値は軽視されているのが現状だ。本書では、真の評価が定まる前に絶滅の危機に瀕している近代建築のうち、後世に残すべき36例を取り上げ、設計時の時代背景や設計者の意図を交えて解説。建築を学ぶ学生や若い建築家、建築に興味がある一般を対象に、近代建築がおかれた現状について考察する入門書とする。
【序文】失われゆく近代建築が問いかけるもの
【現存する建築】坂倉準三「旧・飯箸邸」、鬼頭梓「洲本市立図書館」、松村正恒「日土小学校」、アントニン・レーモンド「聖ポール教会」、槇文彦「代官山ヒルサイドテラス」、前川國男「東京都美術館」、白井晟一「松井田町役場(現・松井田文化財資料室)」、村野藤吾「宇部市民館」、丹下健三「広島ピースセンター」、吉村順三「森の中の家」ほか
【存続が危ぶまれる建築】前川國男「世田谷区民会館・区庁舎」「神奈川県立図書館・音楽堂」、同潤会建設部建築課「同潤会上野下アパート」、坂倉準三「上野市庁舎(現・伊賀市役所)」「鎌倉県立近代美術館 鎌倉館」ほか
【失われた建築】吉田鉄郎「東京中央郵便局・大阪中央郵便局」、岡田信一郎/改修:吉田五十八・木村武一「歌舞伎座」、竹中工務店 小川正「新朝日ビルディング」、テラスハウス標準設計:前川國男/全体計画:日本住宅公団東京支所建築部「公営阿佐ヶ谷住宅」、前川國男「蛇の目ミシン本社ビル」「京都会館」ほか
【海外の建築】エーロ・サーリネン「イエール大学インガルス・ホッケー・リンク」、ルイス・カーン「イエール大学・アートギャラリー」「ペンシルヴェニア大学リチャーズ医学研究棟」、W.J.エドブルック/A.C.ムーア「旧・ワシントン郵便局」ほか
【あとがきにかえて】建築文化の根底が揺らいであるー相次ぐ近代建築の保存運動を通して
【著者紹介】
京都工芸繊維大学教授。1957年兵庫県生まれ。1980年京都大学工学部建築学科卒業。同年前川國男建築設計事務所入所。2000年京都工芸繊維大学助教授、2008年10月より現職。著書に『ルイス・カーンー構築への意思』『近代建築を記憶する』、編著に『前川國男 現代との対話』など。
内容説明
東京駅が華々しく復元される一方で、同潤会アパートや歌舞伎座、京都会館といった身近な建物が取り壊され、失われる風景がある。いまなお愛されつづける場所を含め、建築家たちが求めた暮らしのかたちを見つめ直すためにモダニズム建築を訪ね歩く。
目次
世田谷区民会館・区庁舎
東京中央郵便局・大阪中央郵便局
旧・飯箸邸(現「ドメイヌ・ドゥ・ミクニ」)
歌舞伎座
新朝日ビルディング
公団阿佐ヶ谷団地
洲本市立図書館
同潤会上野下アパート
桂カトリック教会
日土小学校〔ほか〕
著者等紹介
松隈洋[マツクマヒロシ]
1957年兵庫県生まれ。1980年京都大学工学部建築学科卒業後、前川國男建築設計事務所に入所。2000年4月京都工芸繊維大学助教授に着任。2008年10月より京都工芸繊維大学教授。博士(工学)。専門は近代建築史、建築設計論。2000年よりDOCOMOMO Japanメンバー。2012年4月より同副代表。2005~2006年「生誕100年・前川國男建築展」実行委員会事務局長を務める。アントニン・レーモンド、坂倉準三、白井晟一、シャルロット・ペリアン、村野藤吾など多くの建築展の企画にも携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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