内容説明
狙う相手は空母のみ。シルエットから判断して〈ヨークタウン〉型に違いない。ここで手筈どおり、編隊は二手に分かれた。敵空母の両舷から挟撃を狙うのだ。敵が左右いずれに舵をとっても、必ずや命中魚雷が得られる工夫である。真珠湾と違い相手は移動目標だった。全弾命中とはいくまい。だが必殺の九一式改二航空魚雷が二本も突き刺されば、相手の足を止めることができる。後は艦爆隊がトドメを刺してくれるだろう。距離900。列機が対空砲によって砕かれるのを目撃した盛田飛曹長は、投弾の欲求を必死にこらえ、さらに150メートル前進した。彼我距離750。ここでようやく盛田は魚雷投下を決行した。838キロの円柱が小さな波紋を残し、太平洋に吸いこまれていく。
著者等紹介
吉田親司[ヨシダチカシ]
1969年福岡県生まれ。岡山商科大学卒。情報処理会社をリストラされた後、執筆活動を開始。前例にとらわれない奇抜な発想と精緻きわまる軍事考証で、若者から熟年層まで広範な支持を得ている
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