内容説明
遊女の「聖性」と「ケガレ」とは?神仏・天皇の権威の低落とともに、時代を経るごとに多くの賎視の目にさらされることとなった遊女たち。彼女たちはなぜ賎視されるようになったのか。被差別民の歴史とともにふりかえり、遊女の歴史的“変遷”とその実情を多角的に検証することにより、真の姿に迫る。遊里・芝居町であった「悪所」は、長く日本の伝統文化・芸能・民俗信仰の原郷であったこと、その「悪所」の現代における意義をも明らかにした、五木寛之・沖浦和光・朝倉喬司三氏の座談「遊女のいる風景―悪所に棲む人々の輝きに魅せられて」も収録。
目次
大座談会 遊女のいる風景―悪所に棲む人々の輝きに魅せられて
遊女・被差別民とその背景(輝けるテーマパーク・吉原;今は幻のはしりかね―磯部町的矢(三重県))
「聖」と「賎」から被差別へ(東と西の差別、神と遊女;遊女の成立―遊行女婦から遊女へ;荻生徂徠にみる十八世紀の差別観念と遊女;菅江真澄の見た東北の遊女たち;廓の男―妓夫太郎と女衒その光と影;「性欲の文化史」―その変遷と基礎構造)
彷徨する遊女たち(近代文学における遊女像―その「意地」と「張り」の背景に見える世界;日本縦断―赤線跡を訪ねて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫
5
タイトルに偽りあり、とまではいかないものの、タイトルと内容が一致していないような。遊女の話題も被差別民の話題も出てくるのですが、内容は「日本の性風俗史」といったところが正確でしょうね。座談会+全十章からなる論考は切り口も題材もさまざまでして、地方の性風俗あり、古代の「遊行女婦」の変遷あり、売春禁止による赤線跡地のレポートあり、あっちからこっちへ飛びつつ日本史上の性風俗を論じます。日本人の性欲は外国人よりも弱く、禁忌を犯しているという感覚がないとワクワクできないなんて発言も出てきて面白く読めました。星4つ。2020/03/08
桑畑みの吉
3
『別冊歴史読本』の再編集文庫本化。遊女・被差別民の歴史を時系列に述べたのではなく座談会とか現地ルポとかいくつかのテーマに沿って話が進んでいく。本書に掲載されたテーマの数は11、著者も11人となっている。話があっちこっちに飛ぶので内容に集中できなかった。2019/09/09
Mitz
2
大学時代、『監視社会イギリスにみる人種差別』と題する卒業論文を書いて以来、“差別”は関心事の一つである。海外の例を挙げたり歴史を繙いたりするまでもなく、それは日常、さらには自分の心の中に存在するものだ。この本は題名の通り、遊女や被差別民の歴史に焦点を当てたものだが、今に通じる日本独特の文化や日本人特有のメンタリティが垣間見え、なかなか興味深い内容である。2011/11/25
わ!
1
妖怪を勉強する以上は、被差別民などについても、単なる興味本位でなく、きちんとした勉強が必要となる。なにしろ、妖怪そのものが、差別のためのシステム記号として生まれたようなものなのだ(そればかりじゃないけど、だからといって無視出来るほどの関係性でもない)。この本は、差別へ至るまでの遊女の歴史に関して抜粋した論文が載っている(「歴史読本」の編集部編の本だから、それぞれの論文の初出は「歴史読本」なのだろう)。2011/10/28