内容説明
佐賀のホテルで大学生の撲殺体が発見された。状況証拠から、息子を残し宿を出た大学教授の父・小田垣光秀に容疑が向けられる。一週間後、小田垣は北海道で逮捕された。取調官は、「落としの達人」の異名を持つ水木正一郎警部補。完璧なアリバイを盾に淀みなく証言を繰り返す小田垣を前に、水木は長期戦を覚悟する。拘留期限が迫る中、水木が最後に打った大胆な一手とは!
著者等紹介
笹沢左保[ササザワサホ]
1930年、横浜生まれ。60年、『招かれざる客』が江戸川乱歩賞次席となり、デビュー。61年、『人喰い』で第十四回日本探偵作家クラブ賞を受賞。旺盛な執筆活動で、推理、サスペンス、時代・歴史小説と幅広いジャンルで多数の作品を発表。2002年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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米太郎
27
・取調室というある種究極の密室で繰り広げられる攻防戦。アリバイ崩しの様が見事だった。小田垣の精神力の強さ、水木の執念深さも素晴らしい。この作者がご存命の時に出会いたかったなと思った2024/06/16
ぶんぶん
19
【図書館】言ってみれば【再読】何だが、ストーリーというより笹沢左保の文体に酔いたくて読んだ。 独特の言い回しや虚無感の漂う文体が好きだ。笹沢氏は、一方に「木枯し紋次郎」で有名な虚無感漂う股旅物があり、「招かれざる客」等の傑作ミステリー小説もある、多作な作家でした。 250冊くらいは書いていたと思う、そんな左保さんが新たに挑戦した推理物が「取調室」シリーズだった。 これは、新しいもので事件そのものを扱うのではなく、全ての物証や犯罪捜査が終わって、犯人と目される容疑者と捜査官の息詰まる攻防である。2024/08/23
もも
11
笹沢左保さん、何冊か読んでいたので、面白そうと思い読み始めました。最後の方になって、あれ、もしかして時代が古い?と初めて気付きました。心理戦なので地味ですが、面白かったです。2021/07/04
コチ吉
6
地味であり犯人も決して狡知にたけた悪魔の如き人物というわけでもない。犯人しか知り得ない事実が突破口になるというのはある意味定石とも言える。気軽に刑事と犯人との心理的な駆け引きを楽しむ作品だろう。2021/08/26
まぶぜたろう
4
自供を迫る刑事と犯人の対決。取調室を舞台にした刑事モノの嚆矢と、山田正紀は激賞する。確かに、この形式を生み出したことに敬意は表するが、それが新味を失った現在にあっては、ただトリックの貧しさだけが際立つ。トリックのしょぼさを糊塗するために、形式を編み出したとさえ思う。■デビュー作「招かれざる客」の素晴らしさゆえに笹川佐保を読んではきたが、「招かれざる客」を超えるものはなかった。ミステリーへの偏愛は感じられるんだけど…。(○○○)2022/05/12