内容説明
飴色の三度笠、黒棒縞の合羽、腰には黒鞘の長脇差―。下仁田街道を往くのは裏稼業で名を売る無宿の渡世人、伊三郎。道中、何者かに追われる弥吉という若者に出会い、付きまとわれる。売られた許婚に会う旅に同道してほしいと言う弥吉に、亡き弟の面影を見た伊三郎は暫しの間道連れに。しかし、弥吉にはもうひとつの目的があった!秘密を知った伊三郎に刺客が迫る。
感想・レビュー
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やま
58
甲州無宿で凄腕の渡世人伊三郎の活躍の物語です。時は、天保八年(1837)。伊三郎は、文化五年(1808)に甲州都留群犬目村の百姓総代・宗右衛門の次男として生まれ、本名は清吉である。清吉が19才の時に、飢餓で苦しむ村のために父宗右衛門が立ち上がり百姓一揆をしょうとしたら密告により留守をしていた清吉以外の一家が皆殺しにされた。清吉は、密告した者を殺して逃亡した。この時から清吉は名を「伊三郎」と変え、背中に九紋竜の刺青を彫って無宿渡世に足を踏み入れ、長脇差一本を頼りに関東をあてどなくさまよっている。2023/07/21