内容説明
伝統的な教会の衰退と福音派の興隆。その間隙を縫うトランプ大統領の出現。このとどめようのない潮流は、教会の世俗化や、中絶、同性婚容認へと進む社会への逆襲なのか。政治的に語られがちな福音派を歴史と信仰に寄り添って丁寧に描くとき、キリスト教の本質が明らかになる。
目次
第1部 福音派とは(一神教を信じる人々;いろいろなキリスト教会;教会の中をのぞいてみると;もう一つのキリスト教;福音派教会が出てきた歴史的な背景;アメリカで栄えたプロテスタント教会;アメリカの福音派教会の爆発;世界的な変化)
第2部 激変した世界のキリスト教会(ラテン・アメリカの福音派;アフリカの福音派;アジアの福音派;ヨーロッパの福音派;日本の福音派;福音派の未来)
著者等紹介
鈴木崇巨[スズキタカヒロ]
1942年生まれ。東京神学大学大学院修士課程および米国南部メソジスト大学大学院修士課程修了。西部アメリカン・バプテスト神学大学大学院にて博士号を取得。日本キリスト教団東舞鶴教会、田浦教会、銀座教会、頌栄教会、米国合同メソジスト教団ホイットニー記念教会、聖隷クリストファー大学などで47年間、牧師、教授として働き引退。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
57
【トランプ大統領誕生で耳に入ってくるようになった「福音派」とは?】政治的視点から語られがちな「福音派」をキリスト教の歴史と信仰に寄り添いつつ徹底解説した書。福音派の定義:<①「聖霊」を強調する教会で、②聖書を字句通りに信じる教会、③19世紀後半に生まれた比較的新しい教会で、④宗教改革以来の伝統的な教会ではない教会>を指す。「聖霊」自体は原始教会の時から強調する人々はいたが、この現代の福音派が現れてきた源流は、イギリスの聖公会の司祭、ジョン・ウェスレーに至り、メソジストからホーリネスという流れになる、と。⇒2023/09/20
trazom
40
トランプ大統領の登場や政策に、福音派がどのように関わっているのかが分析されているかと期待したが、全く的外れ。この本は、牧師の著者による、正に「福音派とは何か?」の説明でしかない。だから、この副題はアンフェアだ。アメリカでは、福音派の信者が伝統的プロテスタントの2倍近くになっているという数字を示されて、とても驚く。知的で進歩的なプロテスタントが魅力を失い、精霊主義的な福音派が勢力を伸ばしている背景には、反知性主義の現代社会があるのではないか。私には、その反知性主義とトランプ政権とが、同根に思えてならない。2020/01/11
紙狸
11
2019年10月刊行。アメリカの宗教や政治に関する報道でよくでてくる「福音派」について勉強しようと読んだ。筆者は、プロテスタントの牧師。福音派に所属はしていないが好意的だ。「聖霊の働き」を強調するのが福音派だという。牧師ならではの本だが、説教くさくはなく、読みやすかった。トランプ大統領の両親らの宗派を紹介した上で、トランプが「アメリカ・ファースト」という時、「信仰を第一にしてきた先祖たちの歴史」を含んでいるはずだと説く。キリスト教の立場からは、そういう好意的な解釈もあるのか。 2019/12/26
パトラッシュ
11
聖書原理主義者の存在は知っていたが、旧来のカトリックやプロテスタントを全世界で守勢に追いやるほど勢力図を書き換えていたとは。同じ宗教を掲げながら大小の宗派が誕生する歴史を、日本は鎌倉仏教と新宗教で体験している。どちらも強力なカリスマ的指導者が創始し、戦乱や飢饉、明治維新や敗戦など不安な世情から多くの信者を集めた。本書が語る福音派の世界的興隆も、テロの横行やグローバル化やハイテク進化など巨大な転換期の到来を実感し、新しい救いを求めたためだと思う。イスラム原理主義の拡大を含め、21世紀は宗教の世紀となるのか。2019/12/19
紫の煙
8
トランプ絡みの報道で、福音派とは何なのかという疑問が以前からあったので読んでみた。分かったような、わからないような。無宗教の日本人には、理解しがたいのではないだろうか。トランプの考えとか政策とかには一切関係ない本。2019/12/29