内容説明
本書は、『源氏物語』の奥行の深い世界に入りこむための道案内に、との願いから企図された。具体的には、内容や作中人物の意味するところ、また場面や表現・言葉の意義、さらには物語と作者の関係、そして享受の問題にも及んで、多角的な視点を設けて記述した。
目次
第1部 物語の鑑賞
第2部 物語の登場人物
第3部 紫式部と『源氏物語』
第4部 『源氏物語』の伝統
第5部 『源氏物語』の環境
第6部 『源氏物語』のことば
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gorgeanalogue
16
便利なガイドだし、「読むための重要語句」は周到で、「考えるための術語」も批評的な目配りが効いていて、また自然景物の意味について論じる「味わうための花鳥風月」もありがたい。しかし、個人的には「書」についての言及がほとんどないのが惜しく、また、登場人物の解説が類型的過ぎるのが不満である。たとえば浮舟を「受動的」と断じているが、そのあいまいで、「手習」に逃避しているばかりの性格が、彼女が「宇治十帖」の最重要人物であることを示している。いわば浮舟はこの物語の「省筆」あるいは「未満のエクリチュール」を体現している。2022/08/14
maekoo
4
源氏物語の入門参考書! 第一部は各帖の概要解説で鈴木東大名誉教授の解り易いあらすじと素晴らしい解説が読めます。 第二部は主な登場人物の紹介と解説は物語と人物造型論を深めれます。 第三部は紫式部日記とその生涯について分析、紫式部の人物像の様々な説を紹介! 第四部は源氏物語の受容史と源氏物語論・源氏絵の歴史を学べます。 第五部はその時代の有識故実と習俗・儀礼、そして男女の恋愛模様等を知る事が出来ます! →続く2021/11/30
シロクマぽよんぽ
2
少し古めの本ではあるが、古文を教える者はぜひ携帯しておきたい。『源氏物語』の各章、登場人物、紫式部、先行研究、宮中行事や生活環境、花鳥風月等が詳しく載っている。国語便覧と先行論文の間くらいのボリューム。個人的に面白かったのは古文単語の項目で、微妙なニュアンスがよく理解できた(「やむごとなし」の方が「あてなり」より尊重の度合が強い、「くちをし」の方が「ねたし」より重大な不満を示す、等)。2021/01/20
okadaisuk8
2
題名に偽りなし、あらすじ、人物から紫式部の生涯、源氏物語の研究史、内裏から京の都、洛外までの地理、さらには花鳥風月など作品で取り上げられるテーマなど、まんべんなく解説してくてアンチョコに最適。読了してから読むと、また一から源氏を読みたくなる(笑)2020/01/23