出版社内容情報
下村 敦史[シモムラアツシ]
著・文・その他
内容説明
大山正紀はサッカー選手を目指す高校生。いつかスタジアムに自分の名が轟く日を夢見ていた。そんな中、日本中を騒がせた女児惨殺事件の犯人が捕まった。その名は大山正紀。サッカー推薦が消えた大山正紀を始めコンビニで働く大山正紀、アニオタの大山正紀など、名もなき大山正紀たちの人生が狂い出す。登場人物全員同姓同名。大胆不敵ミステリ!
著者等紹介
下村敦史[シモムラアツシ]
1981年京都府生まれ。2014年『闇に香る嘘』で第六十回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。15年「死は朝、羽ばたく」が第六十八回日本推理作家協会賞(短編部門)の、16年『生還者』が第六十九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補、18年『黙過』が第二十一回大藪春彦賞の候補になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のんちゃん
89
女児惨殺事件の犯人が捕まり、その名は大山正紀といった。少年が犯人であったこの事件はとある雑誌により実名報道がなされてしまい、そこから同姓同名の大山正紀達の人生が狂い始め、また、殺人事件が起きた。時系列の歪み、なりすまし、嘘、事件in事件、そしてもちろん叙述トリックなど等、ミステリーの要素のてんこ盛りの話だった。そして着地、あぁ、そう言う事ねと思ったら、また、最後の最後に騙された。ただ本作は単に謎追い話と言うだけでなく、今問題となっているSNSの在り方にも言及する作品にもなっている事を最後に付け加えたい。2022/11/29
アッシュ姉
86
もしも殺人犯と同姓同名になってしまったら。起こりうるかもしれないのに想像してこなかった世界。ほんと世の中は他人を攻撃しすぎる。最初はうむうむと読んでいたのだが、だんだんしんどくなってきた。ぜんぶ理解できたか怪しいけど読み終わったことに解放感!いまのところ、同姓同名の人に会ったことがないことに両親に感謝したい。2023/03/22
Kanonlicht
83
殺人犯と同姓同名だったため人生を狂わされた「大山正紀」たち。数年後、「同姓同名被害者の会」として集まった彼らにはそれぞれに思惑があって…。設定がキャッチーなのでビブリオバトルの本に選ばれるのも納得。確かに人に話したくなる。中身は叙述トリックの見本市のようで、安定の面白さ。途中からすべてが疑わしく思えてくるも、さすがに最後のオチまでは予想できなかった。物語の特性上、一気に読まないとたぶんわけがわからなくなるけれど、展開が早いのでするする読めたのはよかった。2024/04/12
みこ
68
殺人事件を起こした犯人と同姓同名というだけで日本中の大山正紀が大迷惑。ブラックユーモアかと思いきや、SNSでの無慈悲な言葉の暴力など序盤は結構社会派。中盤以降は小説ならではのトリックで自分の先入観が嫌になるほど。全く同じ文章や会話が全く異なる意味になることに驚かされる。ここまで見事にしてやられるとむしろ清々しい。2023/10/30
かぷち
67
同姓同名の犯罪者の存在に苦悩し、誹謗中傷に晒される日々。登場人物たちほとんどが大山正紀。この有りそうで無かった設定でどう料理してくるのか。視覚・聴覚に頼れない文章だとイメージしきれなくて混乱、小説において名前は強烈な個性であることに今更ながら気が付いた。と同時に名前というものの不確かさと恐ろしさ。名前はただの記号じゃ無い、自分の存在そのものを定義し社会の一員に組込む枷のようなものなんだと痛感。少年法・SNS・集団心理、様々な社会問題も散りばめられていて興味深い。正義とは何なのか、何が正しいのか?2023/10/03