内容説明
中国・前漢の時代。武帝・劉徹の下、奴僕同然の身から大将軍へと昇りつめた衛青の活躍により、漢軍は河南の地に跋扈する匈奴を放逐する。さらに、その甥にあたる若き霍去病の猛攻で、匈奴に壊滅的な打撃を与えるのだった。一方、虎視眈々と反攻の期を待つ、匈奴の武将・頭屠。漢飛将軍と称えられながら、悲運に抗いきれぬ李広。英傑去りしとき、新たなる武才の輝きが増す―。北方版『史記』、風雲の第三巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長篇部門、91年『破軍の星』で第4回柴田練三郎賞をそれぞれ受賞。近年は、時代・歴史小説の分野にも力を注ぎ、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞、06年『水滸伝』で第9回司馬遼太郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
343
瞬きする間に霍去病が…と唖然となる三巻。ここに来て李広の存在感が大きくなってきた…と思うと、蝋燭の消える前のなんちゃら。また、新世代への伏線でもある。衛青/李広/伊穉斜、それぞれが己の老いや限界と向き合い、帝もまた武将とは違う観点で惑い、焦燥を募らせる。そんな描写が無駄のない淡泊な文章で表され、対比となる霍去病/頭屠の輝きがピークに達する。頭屠の存在は、霍去病のカウンターというよりも、もし霍去病が…という願望を作者が反映させているようにも感じる。そしていよいよ次巻からが史記本番。楽しみ。2018/11/15
ehirano1
85
「・・・競うというより、争いながら、出世しようとする者ばかりだ(p275)」。綺麗ごとかもしれませんが健全な競争であってほしいですよね、と思って自分が書いた「競争」と云う字に違和感を感じました。そう、「競」と「争」。相互に意味は異なります。どうすりゃいいのコレ?2020/06/14
ehirano1
80
「道理を前面に出した者、誰も話はしたくない。あらゆるものを論破できるから、道理なのだ。そして、実際に道理で解決できる問題など、悲しいほど少ない」。これを20数年前の当方に聞かせてあげたいです・・・・・。2020/03/07
優希
66
漢と匈奴のぶつかり合いは第一部のクライマックスという感じでした。勝つか負けるか、どちらも力劣ることがありません。ダイナミックな展開でありながら人が死んでいきます。霍去病が消えゆくことは分かっていたけれど突然すぎて驚かされました。史実だから仕方ないと受け止めるしかないですね。爽快な雰囲気に暗雲が立ちこめて来たような。権力に蝕まれる劉徹、世代交代の予感。新たな風を感じずにはいられません。2015/02/09
さいたまのたぬき
39
水滸伝・三国志などに続く中華を舞台にした 北方謙三ワールドの1シリーズから後に「史記」を記す 司馬遷の生きた時代を舞台に武帝劉徹の一代記風に 書かれていく物語。 もちろん北方さんの壮大な戦闘シーンをはじめ 読んでいるうちに自分もその場に立っている ように感じてしまう北方節ともいうような文章も健在。 1巻、2巻と衛青を見出し、その活躍によって匈奴との戦いに 勝ってきた武帝。 さらに「天才」霍去病の軍功により完全に匈奴を打ち破った! ・・・かに見えたのだが・・・ 2015/11/03