内容説明
中国の威信を賭けた北京五輪の開幕直前。開会式に中継される“運転開始”を控えた世界最大規模の原子力発電所では、日本人技術顧問の田嶋が、若き中国共産党幹部・〓(とう)に拘束されていた。このままでは未曾有の大惨事に繋がりかねない。最大の危機に田嶋はどう立ち向かうのか―。時代の激流と人間の生き様を描く著者の真髄が結実した大傑作。
著者等紹介
真山仁[マヤマジン]
1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業後、中部読売新聞入社。同社を退職後、フリーライターを経て2004年『ハゲタカ』でデビュー、同作はドラマ化、映画化され注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
128
これはハゲタカシリーズではなく、中国における原発開発にかかわる物語です。前半は日本の技術者が中国の原発完成を託され、さらには中国の党幹部への昇進が約束される人物、中国のオリンピックを記録映画として撮影しようとする有名な中国人女性の監督これらの視点から物語が始まります。書かれたのが2008年頃ということで当時の原発に対する考え方が今(東日本大震災後)とはだいぶ違うことを感じさせてくれました。2017/07/03
アッシュ姉
71
舞台は中国。世界最大規模の原発を北京五輪の開催に合わせ完成させる。運転開始の模様を五輪開会式で中継し、全世界へ華々しく披露する一大プロジェクトが計画された。中国政府関係者による利権争いや不正、手抜き工事や杜撰な管理体制など、問題山積のなか、国家の威信を賭けて、何としても五輪開幕日の運開を死守したい中国側。安全面に大きな危惧を抱く日本人技術顧問の田嶋は、この危機にどう立ち向かうのか。膨大な取材量を感じさせる重厚な内容に、人物造形がしっかりとした生き生きとした登場人物たち。面白くて止まらない超大作。2015/01/21
sayan
47
様々な想い、責任を持つ人間がどう「原発」に向き合うのか、その視点で読むと色々と興味深いものがあった。ありがちな●●人=こういうもんだよね、というステレオタイプか?と思う描写もあるが、しかし、異なる文化価値観を軸にする一つの行動様式としてリアリティを感じる。その記述は著者の取材、経験に裏打ちされたものだろう。2011年以来「原発」のプロ・コンをめぐる議論とは異なる視点は示唆深い。真山仁作品らしくスピード感もあり個人的にはストーリー展開の相性がいい。下巻も楽しみ。2018/02/28
まつうら
45
中国で世界に類を見ない大規模原発の建設が始まった。巨大なカネが動くこのプロジェクトに、利権や権勢の臭いを嗅ぎつけ群がる輩がいるのは、「大地の子」の宝山製鉄の建設プロジェクトにもあった。それが中国という国だ。作業員が建設資材を盗んでいったりするモラルの低さというか、その強欲ぶりには本当に驚かされる。これで原発建設がうまくいくはずはないと思っていると、案の定、IAEAがとても懸念しているシーンが描かれていた。最悪の事態になっても責任回避の弁ばかりで、独力では事態を収拾できない中国をありありと想像できてしまう。2022/09/23
W-G
44
超面白い。感想は下巻でまとめて。