出版社内容情報
『白夜行』『手紙』……新たなる最高傑作
東野圭吾版『罪と罰』
内容説明
遺体で発見された善良な弁護士。一人の男が殺害を自供し事件は解決―のはずだった。幸せな日々は、もう手放さなければならない。東野版『罪と罰』。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年大阪府生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒業。85年『放課後』で第三一回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第五二回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第一三四回直木賞、第六回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第七回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第二六回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第四八回吉川英治文学賞を受賞。19年に第一回野間出版文化賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1253
東野圭吾の構想力の確かさを如実に示す作品。途中までは地道な捜査の連続する警察小説として展開する。それだけでも1篇を構成するに足る内容だが、本書の真価が発揮されるのは実はここからである。警察や検察は、もう終わった事件と考えており、国選弁護士にしても量刑で争うつもりである。和真と美令の2人は、立場は逆なのだが共に違和感を持ち続ける。犯人も被害者も、彼らが知るプロファイルに合致しないのである。結構な長編だが、一貫して緊張は持続し続けるし、読者を引き付ける力が衰えることもない。東野圭吾畢生のミステリー。2024/11/06
パトラッシュ
1211
殺人事件の被害者と加害者の遺家族が思わぬ形で接触し、意外な事実が明るみに出るとは著者得意の作劇法。これまで何度も使われてきただけに、どうしても過去作品と比べてしまう。今回は謎解きに重点が置かれ意外な犯人が明らかになる本格ミステリとして及第点だが、正直今一つ食い足りない。被害者側加害者側双方とも淡々と真相を追うばかりで激情や狂気とは無縁なためか『さまよう刃』の怖さ悲しさ、『白夜行』の暗い宿命感といった心に迫るものに欠けているのだ。犯人の真の動機も今更だし、ミステリ以上のものを望むか否かで評価が分かれる作品。2021/05/29
starbro
1202
東野 圭吾は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本書は、著者版「罪と罰」、被害者&加害者ファミリー・ヒストリーでした。本作は書下ろしではなく、小説幻冬連載を纏めた作品なので、東野 圭吾クオリティではありますが、少し冗長かも知れません。https://www.gentosha.co.jp/hakuchotokomori/2021/05/28
bunmei
991
東野圭吾の新たなストーリー。東野作品は、単にミステリー事件としての謎解きだけでなく、その事件の裏に隠された、已むに已まれぬ人間関係や人情劇が、物語の展開と共に次第にクローズアップしてくる。そしてヒューマン・ドラマとしての面白みも合わせて読者に訴え、本作もそうした安定感のある作品として仕上がっている。今回の事件は、一人の弁護士の殺人事件で幕を開ける。物語の早々に犯人は捕まるが、そこに過去に起きた殺人事件とを絡め、犯人の男がひた隠しにしている、事件の裏に潜む人間関係が、次第に明らかになっていく面白さがある。 2021/04/20
Nobu A
961
久々の東野圭吾本。図書館で予約し約3週間後入手。21年刊行。タイトルの意味は何か、またどんな風に楽しませてくれるのかと期待感で頁を繰る。早い段階での倉木達郎の自供と逮捕が腑に落ちず、そこからが東野小説の真骨頂。メディアの犯罪者への焦点やSNSの加熱で被害者遺族や加害者家族への配慮が蔑ろになる現代、被害者参加制度等、様々な視点から関係者の行動や心理を立体的に描き、物語が展開して行く。瞠目は何を省略し何を緻密に描写するかの塩梅。美令と和真の常滑市からの帰宅は圧巻。無言が読者に訴える凄み。いやー、参りました。2023/04/23