内容説明
昭和歌謡を流す純喫茶「昭和堂」のオーナー・霧子は、四十路の美しい女性だが、金にはがめつく、性格はだらしない。営業中でも、お気に入りのロッキングチェアに腰掛けて、漫画片手にビールをごくごく…。雇われ店長として働くアラサー女性・カッキーと、愉快な常連客たちが、なんとか店を支えている。しかも「昭和堂」には裏稼業が…。町の人々の悩みを解決する「癒し屋」だ。噂が噂を呼び、癒しの依頼はひっきりなしだが、依頼者が持ちかける無理難題に、カッキーと常連客たち「アシスタント」はいつも大わらわ。しかも、霧子の奇想天外なアイディアで、結果は必ず予想外の展開へ!そんなある日、店に霧子への殺人予告が届く…。明日への希望が、心をやさしくほぐす、爽快エンタメ小説。
著者等紹介
森沢明夫[モリサワアキオ]
1969年千葉県生まれ。『津軽百年食堂』は2011年に映画化。『あなたへ』は高倉健主演映画の小説版として18万部のベストセラーになる。『虹の岬の喫茶店』は14年秋に、吉永小百合主演で「ふしぎな岬の物語」として映画化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
294
昭和の歌謡曲が流れる喫茶店、入り口すぐのカウンターには賽銭箱、やる気のないアラフォー美女が店の奥で飲んだくれている。あやしすぎるこの喫茶店の裏稼業は「癒し屋」。優しく癒すのではなく、もうほとんど荒療治。人間の負の感情をうまく操って、最終的には「気づき」によって癒しへと昇華させる。そんな破天荒なキリコさんの過去はカウンセラー。親友を救うことができず、亡くしてしまったことで廃業した。今のキリコさんはロクでもない女だけれど、変にいい人になっていないのがいい。乱暴だれど的確なキリコさんの言葉に、私もハッとしたり。2014/12/13
おしゃべりメガネ
219
さすが森沢さん!ホント、失敗しない作品ばかりをどうして、こう次々と書けるのでしょうか。今作は意外?にも、ちょっとしたミステリー仕立てになっており、その意外な作風にも十分に楽しませてもらいました。昭和歌謡の名曲のワンフレーズを見事にココロに響かせ、そんじょそこらの自己啓発本やスピリチュアル本など足元にも及ばない、たくさんの'癒し'の言葉を次から次へと紡ぎ出す'森沢アタック'はまさしく【癒し屋】以外の何者でもありません。やっぱり言葉の持つ温かい響きが何より一番の処方箋になることは、本当に心が救われますよね。2016/12/31
ヨミー
206
虹の岬の喫茶店に続き、森沢明夫作品2作目読了。序盤からこの2作がリンクしてて良かった。一つ前に読んだ本が80年代中心の音楽に纏わる小説だったので、偶然にも繋がりが出てびっくりした。前半、霧子さんの言動に少し馴染めずにいたが、話が進むにつれ、幸せを感じる沢山のありがたいことばが出てきます。「長所で尊敬され、短所で愛される」や「過去を断ち切るのではなく、受け入れてはじめて人は過去から自由になれるようにできてる」など。いい作品で爽やかな読了感でした。面白かったです。他の森沢明夫作品も読んでみたいです。2015/09/30
文庫フリーク@灯れ松明の火
200
ブラックジャックのDr.キリコが浮かんだタイトル。喫茶店のオーナーでありながら心に傷を負った人を癒す美貌のアラフォー有村霧子。無報酬と言いながら喫茶店に神棚と賽銭箱を置き、「お賽銭」を「奉納」してもらう守銭奴、お金に卑しい癒し屋。他の森沢作品とのリンクも垣間見えるが、どうにも霧子に好感抱けず・・それでもプロローグからエピローグまで、各章に添えられた昭和の名曲の一節に惹かれて読了。第二章【いつかは誰でも 愛の謎が解けて 一人きりじゃいられなくなる】(SOMEDAY/佐野元春)なんて添えられたら、次は?と→2015/01/22
シナモン
185
お酒好きでちょっとだらしない霧子さんのキャラクターがどうも好きになれなくて、途中で読むのやめようかと思ったけど、ダークな感じのプロローグがどんな風に繋がっていくのか知りたくて我慢して読み進めた感じだった。でもだんだん内容も重く深くなっていき、気づけば昭和堂の世界にどっぷり。「幸せはなるものじゃなくて気づくもの」「自分の過去を受け入れて感謝できたとき、人は過去から自由になる」霧子さんの一言一言が胸に響いた。凄い人だな。最後まで読んで良かったです。2020/08/29