感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
70
日本の王朝をテーマにした文学集。「夢魔の森」のメビウスの輪のように逃れられない運命が明かされる時は嘆息したし、「蘆刈」の浅薄な同情をも拒絶するような、同じ境遇に堕ちた人でも分からない凶暴なまでに噴き出る虚に心が凍るばかり。しかし、久生十蘭氏の『無月物語』はその中でも更に異色だ。藤原泰文の「鬼畜の所業」と罵りたくなるほどの悪逆非道ぶりとその死にざまを描く筆の冴えが凄まじい。それもその筈。これは『チェンチ一族』を日本の王朝を舞台に変えて翻案したものなのだから。解説でそのことを知って吃驚しました。2021/12/31
maekoo
4
今まで源氏物語や他の古典で王朝文化やその時代を知ったつもりでいたがこの本はそれを間違いだったと気づかせてくれるとんでもない書物! 「書物の王国」は「夢」「王侯」「人形」「吸血鬼」「美食」「妖怪」等々のテーマを基に集めた様々な古今東西の名のある作家の小説や古典、論評を集めた全20巻の本で書物好きには触手の動くテーマがいっぱいです! 小生は本居宣長の光源氏と六条御息所の出逢いを描いた「手枕」が読みたくてこの「王朝」を手に入れました! ところがなんと20編の作品どれも凄く面白い! 2021/08/15
旭
3
久生十蘭も小松左京も芥川龍之介も、というその顔ぶれが何と言っても楽しい。退廃も血なまぐさい悲劇も「王朝」の名にふさわしく艶があるものばかりで、全部好き!と言ってしまいたい贅沢さ。小沢章友『夢魔の森』はぞくりと怖い伝奇ものに仕上がっていてお気に入り。海音寺潮五郎「蘆刈」は貫禄。生半な同情を寄せる読み手の喉元にも、最後には暗闇からひたりと白刃が当てられる。2012/08/31
canabi
0
18ー20252025/03/31