内容説明
『ドラキュラ』―1897年に刊行された1編の怪奇小説は、トランシルヴァニアの古城を住みかとする不死の吸血鬼ドラキュラ伯爵という20世紀最大の悪のスターを生み出した。小説はまたたくまにベストセラーとなり、やがて伯爵はマントを翻して舞台に、映画にと、原作を離れて1人歩きを始める…。ヴィクトリア朝下に生まれ、現代ホラー文化の源流となった近代の神話の100年にわたる歴史を貴重な図版資料と関係者との綿密なインタビューによってつぶさに描き出し、心理学・社会学的考察も交えて「ドラキュラ」像の確立と変容をたどる―ヒューゴー賞にもノミネートされた究極のドラキュラ読本。
目次
序論 城と蜘蛛の巣と枝付き燭台
第1章 ストーカー氏の血の書物
第2章 イギリスの未亡人対ドイツの伯爵
第3章 「全公演に看護婦一名を常駐…」
第4章 悪魔との取引あるいは、ハリウッドは噛み付く
第5章 幽霊は西へ
第6章 スペイン語版『魔人ドラキュラ』
第7章 ハリウッド・ゴシック
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
22
1897年に刊行されたブラム・ストーカー「ドラキュラ」が作成され、出版されたあと、演劇や映画などのかたちを借りて世に拡散していく過程を丁寧に追ったもの。当時の映画業界などに詳しくないと分かりづらく感じられる部分もあったけれど、ベラ・ルゴシに関する記述など読み応えありました。2020/11/11
hikarunoir
5
架空の存在が現実を翻弄、メディアを乗り換えつつ現在に生き続ける奇怪さは吸血鬼ならでは。図らずもルゴシと渥美清が重なった。2016/08/19
蛸
4
吸血鬼伝説に始まり、ストーカーの『ドラキュラ』の製作過程から、その舞台化、映画化に至るまでの歴史を丁寧におった労作。いかにして原作とは違う現在のドラキュラ像が確率したのかがよくわかる。主に取り上げられる映画作品はムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』〈複雑な権利争いに関しても本書に詳しい)『魔人ドラキュラ』、スペイン語版『魔人ドラキュラ』の三つ。著者はむしろスペイン語版『魔人ドラキュラ』を賞賛しており、そちらの方にも興味が惹かれた。とにかく面白いエピソードが多すぎる。ホラー映画ファンは必読の本だろう。2016/07/06
c
3
以前図書館で借りて読んで面白かったので、改めて買って再読。「ドラキュラ」を書いたストーカーとオスカー・ワイルドが学校の先輩後輩であり、更には同じ女性を…それも19世紀末的なファムファタル風の女優を愛し、この三角関係が「ドラキュラ」にも反映されていたのではないか、という著者の主張が印象に残っていた。しかし以前は読み飛ばしていたが、この関係にはもう一人のまた別の作家も絡んでいたのである。ジョージ・デュ・モーリア。スヴェンガリを生んだ作家であり、ヒッチコックの「鳥」の原作者ダフネ・デュ・モーリアの祖父である。2014/05/19
hata2
1
トッド・ブラウニング監督版よりも優れているというスペイン語版「魔人ドラキュラ」が観たくなってしまった。2011/04/10