内容説明
生命の秘密に憑かれた科学者が死体の断片から創造した恐るべき被造物―フランケンシュタインの怪物。フランス革命の影響下に生まれたこの近代の神話は、多くの文学者、思想家によって19世紀いっぱいさまざまな変奏を奏でながら書き継がれていった。革命家、産業社会の逸脱者、制御を失った科学、人々を搾取する資本、暴徒と化した群衆、巨大で強力な機械、分裂した自我、帝国を脅かす辺境の暗い影―人々に不安を与えるあらゆるものが怪物イメージを増幅させていく。ホフマン、ホーソン、メルヴィルから、マルクス、ディケンズ、ロレンス、コンラッドまで、創造者を脅かし、破滅をもたらす被造物の恐怖を19世紀テクストから抽出する怪物の神話学。
目次
怪物の政治学
怪物は語る―メアリー・シェリーの小説
侵犯の物語、産業の神話―ホフマン、ホーソン、メルヴィル、ギャスケル
ガルヴァーニ電気の世界―カーライルとディケンズの怪物
カール・マルクスの吸血鬼と墓掘り人
危険な発見とマッド・サイエンティストたち―後期ヴィクトリア朝の恐怖小説
帝国の怪物たち―コンラッドとロレンス
リアリズムと野心的な解剖学者
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
寧々子
13
異貌の19世紀シリーズのひとつ。『怪物』という単語を主軸にして、文学に登場する侵犯行為やマッドサイエンティストなどに触れていく流れが面白い良書だった。興味の範囲がぐわんと拡がって浮かれる。だがしかし、追求心もほどほどにするべきという警句も本書から受け取った。従事するものに専心没頭することは、愛情で結ばれた正常な人間関係と対立する。この言葉をもっともだと思いながらも、抗えないのだから困ったものだ。結局好きだもの。2009/07/18
misui
7
神話は異本を生み出す発展性こそが重要とした上で、「死体の部分から造られた怪物が創造者に反逆する」という筋を持つフランケンシュタイン神話の発展を検討する。俎上に上がるのはホフマン、ホーソーン、メルヴィル、ディケンズ、コンラッド、ロレンス、後期ヴィクトリア朝の恐怖小説など。また、社会にもそのアナロジーの範囲を広げ、「啓蒙主義から生まれ出た」フランス革命、マルクスの大衆へと論は及ぶ。フランケンシュタインそのものへの言及は少なめ。わりと堅い本である。2012/05/03
skq
1
流し読み。『フランケンシュタイン』に関する詳細な分析が読めるのかなと期待したが、『フランケンシュタイン』が後世の作品に及ぼした影響がメインの一冊だった。これはこれで興味深いが、今自分が求めている内容ではなかった。2015/11/18
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