出版社内容情報
しなやかで緻密な精神病理学的思考の射程
統合失調症の病像は近年とみに軽症化しているといわれる。しかし一方でこの疾患の病態解明はむしろ停滞している。それは生物学的アプローチと操作的診断基準の隆盛による精神病理学的思考の衰退に起因するものである。
自己あるいは主体を自明のものとして前提するとこの病の病理に迫ることはできない。自己が自己として立ち上がってくる過程そのものに虚心に目を向けてこの自明性を解体することがまず求められる。
呼称変更に伴う種々の問題点や芥川龍之介の病跡などにも触れながら現代における統合失調症の病理学の再構築を目指す意欲的な論集。
目次
第1部 思想史的概説(「統合失調症の精神病理学」への考古学的序説;Wの悲劇―命名と暴力の観点からみた呼称変更)
第2部 自己論(青年期と他者―内因性精神病をめぐって;内破する自己―統合失調症のメタサイコロジー;臨床的エポケーについて)
第3部 治療論(統合失調症の精神療法可能性について―なにゆえに精神分析はこの疾患に対して無力なのか;ナルシシズム・スキゾフレニック―治療論からみたなまざしの病理;ダブルバインドの起源―統合失調症のコミュニケーション試論)
近代の墓標―芥川龍之介と純粋狂気
著者等紹介
内海健[ウツミタケシ]
1955年東京都生まれ。1979年東京大学医学部卒業。東大分院神経科にて臨床に従事。1995年帝京大学医学部精神神経科学教室。現在、同大学准教授。専攻は精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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